記録遺産を守るために 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会【全史料協】

資料保存委員会




資料保存研究報告会(全史料協資料保存委員会研究報告会・第199回関東部会月例研究会)

□テーマ 「市町村合併にともなう公文書保存アンケートの中間報告」
□日 時 平成14年8月24日(土)午後2時から5時
□会 場 松本市文書館会議室(長野県松本市大字和田1058の2)
□共 催 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会資料保存委員会・同関東部会
□目 的 全史料協資料保存委員会が、全国の市町村にたいして平成14年7月に実施した 「市町村合併にともなう公文書保存に関するアンケート調査」を集約しつつあります。
 関東部会の8月月例会にあわせて、このアンケート結果の中間報告をし、会員の意見を広く聞くなかで、 アンケート結果をまとめていくための一助とします。あわせて、市町村合併にともなう資料保存について、 会員相互の意見交換をはかります。
□参加者 19名(神奈川県・新潟県・三重県・東京都・高知県・大分県・ 大阪府・富山県・埼玉県・滋賀県・長野県から)
□経過報告 資料保存委員長 小松芳郎(松本市文書館長)
□報 告 「市町村合併時の公文書保存に関するアンケート中間報告」
資料保存委員会事務局 福島紀子(松本市文書館)
□質 疑
 *自治体史アンケートの内容とまとめはするか。
 *自治体史のアンケートは3月と6月に関東部会と近畿部会で報告済み。 今回の旧役場文書については後日報告書を作成する。
 *市町村合併アンケートのデータやパーツではなく、全体としてストーリーとしてはどういう話、感想がいえるか。
 *昭和の大合併において保存問題についていえば、散逸の危機としては大きくなかったという意見が多い。 旧役場は支所や出張所という形で残ったので、そこに文書は残された。把握しないままで、自治体史編纂時につかったというものもあり、 役所の建替えや、文書の移管時に失われたものが多い。合併直後に廃棄というのは多くはないので、楽観的意見が多い。 したがって合併に伴って廃棄するかどうかは(このアンケートでは)不明確である。文書移動は確実にあるが、 それよりその後の取り組みによる。
 *資料の散逸については、自治体史編纂が終わってのち散逸したとか、 編纂のために原文書が失われる場合も多いとみられる。刊行物と原資料との価値が同じレベルで考えられている。 利用する立場からみると(利用しやすいという意味で)価値判断が移っていくように見える。 また、記念史的編纂物という形で住民へ情報が還元されたとすることが評価できるとは思えない。 そして今、進行している自治体史編纂が資料保存にかわるものではない。
 *アンケートは、公文書をターゲットとしているが、最近の公文書か、旧村文書は歴史的文書か、 文面からはわかりにくい。また、文書管理規程についていっているが、規程中に歴史的資料の保存を記述している例を 把握しているか。三つめに、全史料協としての方向性の提案を期待する。
 *アンケートのなかで「旧役場文書とはなんですか」という質問が多くきた。わかりにくかったかもしれない。
 *全史料協の方向性はこれからきめたい。来年からのテーマでもある。
 *文書管理規程に歴史的資料の保存を記述している例として、藤沢市、草加市、新潟市などがある。
 *自分の県の文書管理規程に疑問を持っている。総務課が書庫に文書をあつめる規定になっているが、 実際にはそうでない。環境整備とかいって捨ててしまっている。明治・大正・昭和初期などの文書は多くは残ってない。 文書管理規程さえ守ってくれれば残ったはずである。このようなことでは、市町村合併時になくなりそうである。 その担当は、どこが中心になって保存するのがよいのか。新市か旧市かあるいは県か。これまではどうか。
 *文書管理規程をきちんと守っている県の例もある。規程どおりやっているので、明治16年(県の設置)から 最近のものまで全部残っている。そして、公文書館法ができたときに「歴史文書として重要なものをとっておく」と 管理規程に入れた。別に選定要項を作っている。そのルールで短期保存のものはすべての文書庫で管理している。 この文書規程は守りやすいように作られているからだと思う。保存は文書担当がする。文化財担当では文書を保管する権限がむずかしい。
 *公文書館ができると文書係の仕事を公文書館がするところもある。文書を集中的に扱うところが担当するのが やりやすい。各地を見ていくとそうである。
 *新潟県では県内に協議会があって、「公文書保存のてびき」を作成した。 編集委員、文書担当者に集まってもらって、残す手だて、意義、方法を話し合い、研修会もしている。 少しでも残すための運動をしていく。それぞれの県の保存機関で独自の取り組みを教えてほしい。
 *埼玉県下では、自治体史編纂中に管理規程を決めたところ(市)がある。編纂室が文書収集するなら、 それが正規ルートになるように文書管理規程を変更してもらう。室長の判断で廃棄して引き継ぐことが できるようになった市もある。堂々と収集できるようにしていきたい。資料館や図書館で収集したところもある。
 *文書館の役割をもつところと、歴史文書を残すという文書管理規程があれば文書は残ると思う。
 *文書担当が歴史的資料の認識を持っていればよいが、担当はすぐに変わるので必ずしもそううまくは行かない。 自治体史編纂室との両者の興味のすり合わせが必要である。
 *地方史研究協議会や全史料協のアッピールなどではいずれも「保存」だけをうたっている。 歴史研究者がその利用の立場での保存をいっている。それだけでいいのか。基本的な違いがあると思う。 規程に基づいて保存されればそれでいいのか。自治体史編纂室は窓口であるが、ただし閲覧対象になっていないし、 公開していない。研究利用のみである。住民の知る権利に対する対応ができていない。もっと公文書館法に基づいた アッピールをするべきである。
 *文書管理規程は整備する。保存のことは盛り込まれた。そして、現用文書は情報公開で対応できる。 そうすると歴史資料はどう利用できるか。利用するところが必要となってくる。
 *歴史資料として保存してしまうだけでは利用できない。
 *年限の過ぎているものは公文書館などで、歴史資料を見せる方向へいくのではないか。 情報公開は別として外ずすからにはどこかで見せるべきである。
 *永年保存というの解釈がなくなってきているところが多い(長期になっている)。
 *全史料協近畿部会会員は自治体史編纂担当者が多く文書担当の人は少ない。 したがって合併関係の情報が届かない。そこで、近畿部会10年目のテーマとして町村合併による文書のことを選んだ。 合併は、複数の市町村が合併するのでそれぞれ相手側があり(自分ところだけで勝手にできないので)、 具体的には決められないが、システムの問題だけはできる。また、合併という大きな業務の変化の場合、 文書保存は一番最後に回される問題でもある。
 *あちこちで合併が進行中である。自治体ではそのために「お掃除」という文書管理をする。 ファイルシステムを導入して、コンピュータメーカーやファイリングコンサルタントがくる。 何が起こるか。文書管理コンサルが指導する。引出しをあけると、物が残っている。 「自分で判断して、捨てなさい」と減らすことを迫られる。後はきれいに見えるように指導する。 判断するのは個人が個々にする。「歴史的資料をどうやって?」自分の仕事に対する誇りや信念に照らして、 またこの地域には何が重要かを判断する。正解はない。まちがっているということはない。 「正しい」と自分で言うしかない。主張するだけの自信を持つ。
 *一つだけ判断する基準をいうなら、「そこにしかないものか。別にオリジナルがあるのか、 あるなら捨ててもよい」と思う。
 *我々はそのことをゆだねられているのであるから、 専門性があるので自分たちでやる。そのための最大限の知識を自分で養うことが必要となる。


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