The Japan Society of Archives Institutions Kinki District Branch Bulletin 全史料協近畿部会会報デジタル版 No.64 2018.10.18 ONLINE ISSN 2433-3204 |
■第147回例会報告■ 2018年(平成30)9月19日(水) 会場:滋賀県庁新館7階大会議室 |
公文書管理に関する条例整備について 目 次 例会の概要 報告1 鳥取県における公文書管理条例の制定と施行後の状況について 島谷 容子 報告2 (仮称)滋賀県公文書等の管理に関する条例等の制定に向けた検討状況について 中井 善寿 質疑・意見交換 参加記 鳥取県・滋賀県の取り組みを聞いて 松岡 弘之 最近、国における森友・加計学園や防衛省の南スーダン日報問題など、再び公文書管理に関するニュースが全国的に注目を浴びています。そうした中、自治体の動きとして昨年度第138回例会では、滋賀県における公文書館機能の整備や公文書館管理条例の検討についての地道な取組の報告がありましたが、今年度その滋賀県で、公文書管理条例等の整備が具体化してきました。また、滋賀県からも本会における報告を通じてアーキビスト等の意見を参考にしたいという申し出もありました。 そこで、本会では公文書管理条例の先行事例である鳥取県と整備過程にある滋賀県の2つの報告をもとに、改めて地方自治体における公文書管理の条例整備について検討することとしました。 以下、当日の例会での報告および意見交換について要約しましたので報告します。 第147回例会 報告1 鳥取県における公文書管理条例の制定と施行後の状況について(要約) 島谷 容子 氏 みなさんこんにちは。御紹介いただきました鳥取県立公文書館の島谷と申します。 今日は公文書管理条例がテーマということで、鳥取県の事例を紹介してほしいということでお招きをいただき、たいへんありがとうございます。 私自身、行政職の人間でして、専門職ではないのでご質問とかご意見に十分お答えできるかどうか自信はないのですが、私自身も勉強中の身ということで、お話をさせていただきつつ勉強させていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。 まず、鳥取県の紹介をさせていただきます。人口が日本で一番少なく約57万人の鳥取県です。中国地方の北東部に位置しています。島根県と鳥取県、どっちがどっちかよくわからないとよく言われますが、右側が鳥取県です。覚えて帰ってください。山も有り海も有り大きな自然に囲まれたとても暮らしやすい県です。最近は星取県といって、星がきれいに見える県として売り出しています。 1 鳥取県立公文書館について 鳥取県立公文書館は、県立図書館やとりぎん文化会館という大きなホールと同じ敷地内にあります。県庁の目の前、駅からも車で数分という大変便利なところにあります。 鳥取県立公文書館の沿革ですが、まず昭和55年から設置に関する検討が始められました。その間、昭和62年に公文書館法の公布があり、そうした流れを受けて平成2年10月に都道府県で16番目の公文書館として開館をしました。 島谷報告 1 当初は文書館(もんじょかん)という名前が想定されていたのですが、鳥取県は公文書を中心にやっていこうということで、最終的には公文書館という名前になったと聞いています。そして、平成24年の4月に鳥取県公文書等に関する条例が都道府県で3番目に整備される運びとなりました。この条例制定以降、鳥取県でもいろいろな動きがありまして、もうひとつ平成29年4月に歴史公文書等保存条例ができています。この条例ができたのは、平成28年2月の県議会での一般質問において、市町村ともっと連携して歴史公文書を引き継いで保存していくべきではないかという指摘を受けたのがきっかけです。これは全国初の条例となっています。 鳥取県立公文書館は、地上2階地下2階、床面積が1、728uの建物で、書架延長は7kmあります。1階は閲覧室、2階は県史編纂室とか研修室があります。地下2階は両方とも書庫で、地下1階の書庫は集密書架となっていて、県庁やその他機関から引き継いだ歴史公文書を保存している書庫です。現在、51、349冊の引継文書を保存しています。地下2階の書庫は固定となっていて、統計資料、行政刊行物、個人からの寄贈や寄託文書を保存しています。鳥取県立公文書館の主な業務としては、特定歴史公文書や行政、統計刊行物の収集、整理、保存、利用提供、です。それから、展示、学習といった普及啓発の事業をしています。もうひとつ、新鳥取県史編纂事業ということも行ってます。 鳥取県立公文書館の概要 拡大はこちら 2 公文書管理条例について 鳥取県公文書等の管理に関する条例は平成24年の4月に施行されたのですが、どういった経緯をたどってできたのか、まず最初にお話したいと思います。平成21年頃、ちょうど鳥取県の公文書館も平成2年に開館して20年経ち、いろいろな課題に直面していました。鳥取県は平成16年度末に電子決裁システムを導入しましたが、電子文書の取扱いだとか簿冊の検索システムだとか、そうした課題に直面していた時期でもあります。一方、国でも年金の問題ですとかいろいろな不祥事の発生にともなって、公文書管理法が平成23年4月に施行されます。この法律では、義務ではありませんが地方公共団体でも文書の適正な管理をするようにということで、鳥取県でも早めの対策が望まれました。まず、鳥取県立公文書館基本機能検討委員会という組織を立ち上げたというところが条例整備の第一歩ということになります。 この基本機能検討委員会の提言を受けて、条例の常任委員会提出、パブリックコメント、可決成立、条例施行という流れになります。この検討委員会は5人の構成員で組織され、学識経験者、利用者代表者、政策法務課長、情報政策課長、公文書館長というメンバーで3回の委員会を開催し、先進県を視察したり、文書管理の制度、実務、電子化などの面で具体的な本県の課題等を洗い出したところです。その委員会の下には、担当者レベルの公文書管理等検討WG、電子公文書検討WGを設置して、それぞれ課題の検討を行いました。 この基本機能検討委員会で洗い出された課題は一覧で示しております。引継とか評価選別とか、このときは永年という文書がありまして、永年文書は無条件に公文書館へ引き継ぎがなされていました。もちろん、この時点では電子文書への対応ということもまだされてないので、電子文書の対応が不十分であるということ、それから評価選別に関しては基準はあったが具体性に乏しかったということ、永年文書は無条件に引き継ぐので、選別していた文書というのは有期限の10年とか、5年とかに限られていて、基準がそのままでは使えなかったということがあります。それから、公開基準に関しても独自の基準がないなど、そういった課題がありました。それから、簿冊の検索システムですが、完結して40年経過した簿冊のみ公開していたということで、所属、作成した原課の意見を聞いて、原課が了解したものだけを公開していました。それから、書庫も狭くなっていて毎年書庫内で移動が発生していました。普及啓発はかなり手広くやっていましたが、ひとつひとつをもう少し充実したほうがよいのではないかという指摘もありました。 島谷報告 2(フロアーから) 基本機能検討委員会からの提言は主に6点あります。公文書管理条例を制定し、公文書管理体制の充実を図ること、公文書の保存年限を永年ではなく30年を最長年限として改めるということ。簿冊の管理については、検索システムの整備が必要だということ。県職員の研修をもっと充実させるべきということ。書庫が狭くなってきており新しい書庫スペースの確保ということ。最後は専門職員の確保とか育成、処遇が必要であること。このような提言を受けました。 ワーキンググループのからも意見も出まして、まず公文書管理検討ワーキングからは、こちらも公文書管理の条例制定に関する意見と、もうひとつ施設整備に関する意見が出ています。この条例は、適用範囲が知事部局だけではなくて、教育委員会とか各種の行政委員会も含むことを想定していたので、引き継ぐ公文書が増えることが危惧され、書庫の整備が意見としてあげられています。もうひとつの電子公文書検討ワーキングの意見は、電子決裁システムで起案した文書というのは電子上に作った簿冊に一個一個ずつ綴られていくような仕組みなんですけれど、その電子上の簿冊を引き継ぐような一定のルールを確立する必要があり、独自のシステムを構築することという提言をいただいています。 このような提言をうけて、鳥取県の公文書管理条例は平成24年4月に施行しました。鳥取県の条例のポイントを少しまとめてみました。まず、公文書の作成から最後の引継、廃棄まで統一的ルールを定めました。実はこれがすごく大きくて、条例でこれを定めたということは県民の意見を聴いて整備したということです。内部の文書管理規程だと役人の都合で勝手に変えることができますので、それを条例で定めたということがまず一番のポイントだろうと思います。また、条例により知事部局だけではなくて教育委員会、公安委員会、警察本部、その他各種委員会とか15機関の対象部局を明記したこと。簿冊の名称とか保存期間を記載した簿冊管理簿を全部公表するとしたことです。いま鳥取県の簿冊システムでは作った簿冊がすべて公表されています。それから、簿冊を廃棄する場合はあらかじめ公文書館長との協議が必要と条例で決まっています。保存期間が満了したからといって勝手に捨ててはいけませんということを庁内でもかなり言っています。捨てる際には必ず公文書館長との協議が必要となっています。それから二番目のポイントとしては、保存期間の上限を設定し、永年保存を30年保存にしたことです。これによってすべての簿冊が有期限となりましたので、すべての簿冊が評価選別の対象となりました。それから3番目として、歴史公文書として引き継がれた公文書を特定歴史公文書等として公文書館で一元管理し、住民の利用に供するとしたことです。公文書館に引き継がれたあとの文書を特定歴公文書等として区別をしているんですけれども、公文書館に来た文書は基本的に原則公開です。公開して住民の利用に供するということで、いままでは役所の方を向いて仕事をしていたのが、今度は県民の方を向いて県民の窓口として仕事をするという大きな変化がありました。 鳥取県の条例と国の法令を比べますと、さきほど申し上げた廃棄の手続きのあたりですね。例えば現用簿冊の廃棄の手続きは、廃棄の1ヶ月前にホームページに公表しパブリックコメントを募集するというような、こういった手続きを踏みます。それから特定歴史公文書の廃棄の手続きに関しても公表するという基本的なルールを定めているところが特徴です。 島谷報告 3 3 条例施行後について 次に施行されたあとの状況ということでお話ししたいと思います。 条例施行した後何が変わったか、たぶん今日の一番のポイントだと思うんですけれども、さきほど条例で定めることが一番のポイントだとお話ししましたけれど、その中でちょっと細かい項目出しをしてみました。公文書管理の流れ、それから引継ぐ対象の実施機関、評価選別、公開基準、県民の利用窓口、こういった項目で条例の施行前と施行後で対比をさせていただいてます。一つずつお話ししていきたいと思います。まず公文書の流れの変化ですね、以前は永年という文書がありまして、永年の文書は中間書庫に引き継がれて文書完結後20年したら無条件で公文書館に来るという道筋が固まっていました。対して10年とか5年の文書は保存期間満了した後、評価選別をして必要なものは公文書館へ引き継ぐというような流れになっていました。1年保存については保存期間が満了したら捨てるという手続きになっていました。それからもうひとつ、完結後40年を経過して、作成原課の了解を得られたもののみを公開していました。作成した原課に問い合わせて原課がOKを出したものだけを県民に見せていたということで、かなり制限がありました。これが条例施行後どうなったかというと、まず先ほどの永年文書はなくなりました。30年、これが最長になっています。常用文書というのがありますが、台帳とか現用で使っていくものは常用文書としています。基本的に30年も10年も5年も流れはすべて一緒になりました。すべての公文書において保存期間満了後の措置を判断して、保存期間が満了したあとは公文書館と協議をして引き継ぐか捨てるかというような流れになっています。利用提供に関しても、基本的には公文書管理条例に定める審査基準に基づいて審査をして、個人情報とか法人情報とか権利を侵害するような情報は被覆しますが、基本的には公開します。所属の意見も参酌するという条文になっていますが、最終的には公文書館長が決定します。基本的に県民目線で、県民の利用促進のことを考えて行う、この点が条例施行後変わったことであると思います。 続いて2個目のポイント、各実施機関からの確実な引継です。条例が施行される前は、主に知事部局から引き継いでいました。知事部局の補完的倉庫の立場だったと言えると思います。業務に必要になった簿冊を、時々県職員が見に来るというような位置づけ、そういうことで公文書館は使われていました。しかし、ほかの実施機関からは引き継ぎがなかったかというとそうではなくて、要請があれば知事部局に準じて、引継を行っていました。条例施行後は15機関を条例で定めまして15の実施機関から引き継ぐということを明記したことで、知事部局の立場も相対化されてそれぞれの組織のアーカイブズとして動いているということになります。ちなみに平成29年度の引継の実績ですが、合計では518冊の引継を受けていて、選別率1.6%です。 3番目の評価選別に関しては、評価選別の基準はあったけれども具体性に乏しかったというような条例前の状況で、条例を作ったときに選別方針が定められました。歴史公文書の定義を定め、これに該当する文書は歴史公文書として公文書館に引き継ぐことを明記しています。鳥取県公文書館のホームページにも載っていますので見ていただけたらと思います。ちなみにこの評価選別ですけれども、鳥取県の公文書館がどんなふうに評価選別をやっているか、スケジュールを示したものがこちらです。評価選別の体制としましては私を含む行政職2名、専門評価員3名(非常勤)、あわせて5名で評価選別をおこなっています。だいたい5月くらいからスタートして半年くらいかけて評価選別をやっています。今まさに作業の真っ最中です。後半では、引継された簿冊の目録を作ったり、選別記録を作成したりと、一年かけて動いている状況です。 続いて4番目のポイントです。4番目は利用制限ですけども、これも条例を機に整備しました。基本的には原則一般公開します。個人情報が入っているものは利用制限、基準に基づいて利用制限します。この基準作成に当たっては国立公文書館でも使っておられる30年ルールを適用しています。各機関の意見も参酌はしますが、最終的には公文書館長が決定します。ちなみに、この決定の処分に不服がある場合は鳥取県情報公開審議会で審議することも決まっています。 最後5番目のポイント、県民の窓口になったということです。条例ができるまでというのは、県職員が業務で見たいなと思ったら時々公文書館に行って引き継いだ簿冊を見に行くというような位置づけでした。これが条例施行後は、県民の情報公開の窓口になりました。県庁から受け入れた文書を県民に利用しやすいようにきちんと整えて県民に提供するという大切な役割を、今、担っています。平成29年度の公文書館の利用実績で、一般の方が利用された数は、請求者83人、件数にしたら1,029件。行政資料の利用の実績は80人、341件です。これ以外に県職員の利用も260数件あります。県職員にも利用していただいています。ここまでが公文書管理条例の制定から制定後の状況で何が変わったかというお話しでした。 4 歴史公文書等保存条例について 次は、もうひとつの条例をお話ししたいと思います。 公文書管理条例とは少し違って、市町村との連携とか、そういうことを定めた条例です。どんな条例かといいますと、歴史公文書、地域にとって大切な資源を県と市町村、県民みんなで相互の連携と協力で将来に引き継いでいこう、その役割とか責務、お互いの連携とか協力を条例に明記したところがポイントになっています。きっかけは平成28年2月の議会の質問でした。もっと町村と連携をとったらどうか、とるべきではないかというような質問が出されたことによるものです。こうした議会での質問をきっかけの一つとしてまず鳥取県公文書館は市町村の実態を調査することから始めました。平成28年の4月から5月、1ヶ月かけて県内19市町村全部回りまして、各市町村がどんな実態なのかということを調査をしました。書庫では、保育園の倉庫を書庫として転用している役場もあったり、いろいろな実態がでてきて、実態調査の中で課題や実態が浮き彫りになってきました。市町村は人員が限られていて、文書管理だけではなくて総務とか庶務とかいろいろな業務を兼務しておられる方が多く、なかなか専門性が養えないことや書庫がほとんど満杯という市町村が多いこと。それから、歴史公文書等の保存の手順が定まっている市町村が、鳥取は19市町村ありますけれども、2市2町しか手続きが決まってない。大事な歴史公文書が廃棄されてしまうような実態が浮き彫りになりました。こうした調査を通して、市町村からもいろいろな要望が上がってまして、研修をしてほしい、実地指導をしてほしい、窓口になってほしい、マニュアルをつくってほしいとかいろいろな要望をいただいております。 一方で、公文書館のあり方、役割、そうしたものをもう一回見直すべきだといったお話しもあって、ここでも検討会議という組織を立ち上げています。28年5月に公文書館あり方検討会議というのを立ち上げました。検討会議は4回の会議を経て報告書をまとめています。報告書では、歴史公文書の保存の基本的な考え方、公文書館が市町村との連携協力に果たすべき役割、公文書館が機能・役割を果たすために求められる取組、この3点について提言を受けました。こうしたことを受けて、県民の責務と相互の連携を条例に明記した条例が平成29年4月にできたところです。 条例整備だけでは市町村との連携が図れませんので、それを具体的に進めるためにどうしたらいいかということで、いま、県と市町村の共同会議というのを設置し、年に何回か公文書館と市町村の文書管理者が集まっていろいろな取組をやっています。昨年は研修をしたりとか、部会を作って個別課題を検討しました。部会では、評価選別部会を設置して市町村用の評価選別標準例というのを作りました。それから、災害時にどうやって連携していこうかとか、普及啓発とか、こういった活動を行っています。今年度もこの会議は継続しています。 5 最近の動き それでは一番最後に最近の鳥取県の動きをまとめたいと思います。 鳥取県が取り組んでいる課題と取組ということですけれども、いろいろな条例も整備して取り組んでいるんですけれども、やはり課題もあります。公文書館の課題としては、簿冊情報の検索はできるが、利便性でもう少し課題があるということ。それから、公文書管理条例が制定された平成24年より前に引き継いだ永年の文書ですけれども、いまの条例と照らし合わせてその永年の文書が歴史公文書にあたるかどうか、もう1回点検する作業にいま取り組んでいます。ですが、数がかなり膨大でなかなか進んでいないのが現状です。また、引継文書の利用可否の事前審査ですけれども、利用請求、県民の方が見たいといってこられたときにすぐお出しできるのが理想なんですが、実際には請求があってから中身を審査して見てもらうということが実態で、事前審査をもうすこし進める必要があるということ。それから、文書のデジタル化とかデジタルアーカイブとか、いまどこの館でも課題かもしれませんけれども、これからの時代はここは避けて通れないと思っています。このあたりがまだ進んでいないという課題があります。 それから、全庁的な課題として文書の保存期間の設定根拠が業務実態にあっていない。今年度公文書の適正管理のために立ち上げたプロジェクトチームがありまして、ここで全庁の実態調査をしたときに、文書作る際に保存年限を設定する基準があるのですが、どの項目にも当てはまらなくて、その他という項目になっていた文書が4割くらいありました。業務の実態に保存年限があってないんじゃないかということで、現在見直しを進めているところです。 それから2番目としては、旧優生保護法などに代表される個人の権利義務に関する文書、こういった文書を担当者の判断で残したり捨てたりするのではなくて、確実に残していくためにどうしたらいいのかということです。 それから3点目としては文書事務を効率化していく、不正を防止していく、ミスを防止していくためにどうしたらいいのかということです。鳥取県では公文書管理適正化推進チームをこの4月に立ち上げました。知事のトップダウンで立ち上げまして、何度か会議を開催しています。副知事がトップ、以下総務部長などで構成され、事務局は職員支援課が持っています。政策法務課や公文書館という文書の担当課ではなく、職員支援課。職員支援課は業務改善とか働き方改革とか、職員の安全衛生とかを担当していますが、ここが事務局を持っているのには実は意味がありまして、文書の管理という視点だけではなくて、働き方改革だとか業務改善という視点から、効率化したり、わかりやすくしようとしたりということで、ここがリーダーシップを取って検討をしています。今年度、いま3回会議をやりまして4月の立ち上げ時は知事も出席しました。第3回は先日9月14日に開催されて、ガイドラインのたたき台ができました。それから、先ほど申し上げた現行の保存期間の区分、これが実態とあってないということで見直し案ができています。歴史公文書の評価選別基準にしても、もう少しわかりやすくということで見直し作業をしています。この3本の軸でいま動いてまして、早ければ年内にでも動けるものは動くという予定でいます。もちろん予算とか規程の改正がいるものは来年度にずれ込むということはあるか思いますけれども、そういった検討を続けています。 それでは最後にもう一度鳥取県の宣伝をして終わらせてください。鳥取県、いま、蟹鳥県ウェルカニキャンペーンというのを、9月1日から2月末までやっています。期間中に対象の宿泊施設に泊まっていただいて応募をいただくと毎月100名の方にカニが当たるというキャンペーンです。11月頃からシーズンに入る松葉ガニがおすすめなので、もし機会がありましたら鳥取の方にもお越しいただきたいと思います。参考になるお話しができたかどうかわかりませんが、不足する部分は質疑のところでまた意見交換させていただきたいと思います。 報告2 (仮称)滋賀県公文書等の管理に関する条例等の制定に向けた検討状況について(要約) 中井 善寿 氏 滋賀県では、現在、公文書管理条例と公文書館条例の制定について検討を進めています。先週および今週にかけて、条例の現在での検討状況を多様な場で報告し、県民のみなさんをはじめとする意見を頂戴したいと考えています。この例会もその一つとして位置づけていますので、この時期に開催していただき全史料協近畿部会に感謝申し上げます。 条例全体の骨子については「(仮称)滋賀県公文書等の管理に関する条例・(仮 称)滋賀県立公文書館の設置および管理に関する条例の骨子(案)」を参照していただきたいと思います。公文書管理法と同じく、公文書のライフサイクル全般に亘って規定しようとするものです。 中井報告 1 1 文書管理の現状と課題、条例化の検討経過 現用公文書の規定は、実施機関の職員が職務上作成し、または取得した文書であって、組織的に用いるものとして、実施機関が保有しているものとしています。現在、県政史料室で閲覧に供している歴史的文書は「歴史的もしくは文化的な資料または学術研究用の資料として特別の管理がされているもの」として、現用公文書からは除かれたものとして運用しています。今後は、特定歴史公文書等として、公文書館に移管されたものとして取り扱うことになります。 公文書等の管理の現状としては、現在約110万冊のファイルがシステム登録されていて、所属のキャビネットで保管後、文書庫に保存されています。本庁で保存されている文書は約3万5千箱(A4サイズ)。また、地方機関を含めた年間の廃棄箱数は約4,500箱で、廃棄対象の文書の中から歴史的文書として選別しているのは約240冊(本庁のみ)となっています。 歴史的文書として県政史料室が管理しているのは9,236冊で、平成25年3月に戦前までの9,068冊が県指定有形文化財に指定されました。県政史料室は平日の開庁日に合わせて開室していて、年間の閲覧申請件数はH29年度で204件です。 平成27年度から歴史適文書の保存・活用事業を立ち上げ、公文書館に関する有識者懇話会を設置し、5回にわたる懇話会開催ののち、平成28年9月に「未来に引き継ぐ新たな公文書管理を目指して(方針案)を策定しました。 そこで挙げられた公文書管理の課題として(1)公文書のライフサイクル全体について、県全体の統一したルールがない(2)永年保存の現用公文書が存在し、歴史資料として保存する手続きがない(3)県民の権利としての歴史的文書に対する利用請求権の規定がない(4)県政史料室は公の施設として位置づけされていない、などがありました。 しかし、職員の間では条例制定に対する運用面での不安感もあり、庁内でのさまざまな意見調整、検討・協議等の調整期間を経て、現在、具体化の検討に入っています。 中井報告 2 2 条例案の概要 条例の概要ですが、特徴的な規定としては以下のとおりです。 (1)「公文書は健全な民主主義の根幹を支える県民共有の知的資源」であり「県民の知る権利を尊重することが重要である」ことを明記 (2)公文書を廃棄しようとするときは、第三者機関等から意見を聴取 (3)教育機関との連携による特定歴史公文書等の利用促進、図書館等の資料の相互貸借による利用・調査研究の促進、市町への情報提供、助言等その他の支援などをやや具体的に記述 (4)現用公文書、特定歴史公文書等の管理に関する研修による人材育成 このほか、県の出資法人や指定管理者に対する公文書の適正な管理に関しての努力義務を明記することとしています。 3 公文書の取扱方針 現用公文書の管理で問題となるのは、文書の作成義務というところです。どのような文書を、どの時点で、どのように作成するのか、これが悩ましいところです。私が、入庁したころは公文書といえば起案文書でした。パソコンで仕事をしている現在、職員は文書を日々大量に作成をします。事務は文書で行うのが文書主義ですが、「過程や実績を合理的に跡付け、検証できる文書を作成」と義務づけたとき、どう文書を整理していくのかが課題です。 具体的な文書の類型については、文書管理規程の別表で、32の事項について文書の類型を示し、さらにその類型ごとの具体例を例示して、職員がイメージできるようにしたいと考えています。 しかし、どのように作成するのか。たとえば、「最終的な意思決定のみならず、経緯も含めた意思決定に至る過程の文書」であれば、知事の決定に係る事項の場合、図-2のような協議過程を経ますが、この過程も直線的なものでなく、何度も協議を繰り返されたのち決定となるので、どの段階の協議をどのように記録し、残していけばいいのか示す必要があります。基本的には課長以上の協議についてクレジットを付けて協議結果を記録するのですが、手直しするごとに記録として残すのは煩瑣であり事務も大変なので、重複は避け、意思決定の過程を跡づけるための重要ものについて残していくように考えています。 また、会議については、現在県の付属機関の会議等については会議録を作成することになっていますが、大小さまざまな会議があり、会議の種別に応じて全文筆記か、要点筆記か、または会議要旨にするのかその作成方法も含めて明示し、その他重要な交渉や要望等の記録についても同様に明示します。 現用公文書の整理の考え方については、文書管理規程の基準表を参酌して、歴史的価値の判断により保存期間を設定。保存期間は原則30年以下とし、保存満了時の措置を設定します。また、相互に密接に関連する現用公文書は同一のファイルにまとめて保存。保存期間を1年未満にできる文書については、その類型を示し、適合切性を判断して設定することを考えています。 なお、廃棄文書については廃棄前に第三者機関に意見を聴取し、歴史的価値のある文書については各所属に公文書館への移管を求めたのち、残りを廃棄することを考えています。 4 特定歴史公文書等について 歴史資料として重要なファイルは、特定歴史公文書等として公文書館で永久に保存しています。利用審査にあたっては時の経過を考慮して判断することとします。現在、個人情報については50年、80年、120年の区分で非公開の判断を行っていますが、国立公文書館の基準を参考に見直す必要があります。 公文書館の業務については、今後、特定歴史公文書等が移管されるのでその整理、保存業務が重要になります。加えて、所属に対する移管に関する助言、調査研究、講座の開催、また将来はデジタルアーカイブズによる情報発信も考えており、その業務が増加するため、公文書館の体制整備が求められます。 特定歴史公文書等の利用促進に係る他の機関との連携については、今でも、県立図書館や町の博物館とは展示物の貸借等行っています。さらに、学校等の教育機関との連携により特定歴史公文書等が役立てられないか、あるいは市町との連携により歴史公文書の所在情報などのネットワーク化を図るなど、市町の歴史公文書の保存等に何らかの支援を行うことを考えています。もちろん、こうしたことを実行するには公文書館としての相応の力量が必要になります。 5 今後の予定 今後のスケジュールとしては、年内に条例に関してのパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえて、2月の県議会に上程したいと考えています。 こうした新しい文書管理の条例、ルールは制度として定着し、実際に円滑に運用されなくてはなりません。また、公文書館の業務は広がるのでどのように業務を行えばいいのか、他府県の状況を参考にして勉強していきたいと思っています。 質疑・意見交換 (進行:烏野)それでは意見交換を始めたいと思います。意見交換には、報告者の鳥取県の島谷さん、滋賀県の中井さん、それに滋賀県から条例の主管課になります県民生活部県民活動生活課県民情報室長の小川一記さんに入っていただきます。小川さまよろしくお願いします。 (進行)中身の濃い報告をいただき、質問もたくさんいただいています。本日は全史料協近畿部会の例会ですが、滋賀県職員、県内外の文書管理担当者等多くの方に来ていてだいており、たくさんの質問をいただいています。時間も限られていますので、島谷さん、中井さんの順で質問を読み上げますのでお答えいただきたいと思います。 質疑・意見交換 1 (島谷さんへの質問) Q 鳥取県で条例を制定するのに特に苦労されたことはありますか。県全体としてでも職員一人ひとりのことでもいいです。(大津市T氏) A なかなか難しい質問ですけれど、一番は職員の意識だろうと思います。鳥取県は条例を整備していろんなルールをつくってやってますけれども、いまでも30年の文書しか公文書館には引き継がれないと思っている職員は結構います。5年とか10年の文書は捨ててもいいと思っている職員はいます。ですので、まずは県職員の意識を変える、改めるということが大事だと思います。私も研修の都度に、5年や10年の文書でも公文書館に引き継がれる文書がありますとずっと言い続けています。中には1年とかでも引き継がれてくる文書がまれにあったりして、将来、県民が利用するかもしれないという目で文書をきちんと作るようお願いしています。 (進行)本来であれば質問者に追加の御発言などを確認するところですが、質問がたくさんありますので、もし追加があればその場で挙手をしていただいて質問をお願いします。 Q 特定公文書の廃棄の実施状況について、どの程度か、その基準はどうか。電子決裁システムの利用状況はどうか。公開基準について、情報公開に準じるとある一方で時の経過に準じるとあるが具体的な基準はあるか、その3点。(尼崎市M氏) A 最初の特定歴史公文書の廃棄は、公文書館に引き継がれた特定歴史公文書の廃棄のことだと思いますが、これはまだしたことがないです。先ほどの話の中でも触れましたが、条例制定前の永年文書の再選別の作業に今年から本格的に取り組んでいまして、専門の非常勤に来ていただき、再選別の作業をしていただいています。ですので、今年度末には特定歴史公文書の廃棄というのがでてくるだろうと思います。手続きとしては、公開してパブリックコメントを取って廃棄ということになっていくのだと思います。2番目の電子決裁の利用状況ですけれども、県庁全体の決裁の中で、電子決裁をしている文書がどれくらいかというと、鳥取県は基本的に100%です。すべて電子決裁でやります。簡易なものは紙で済ませる場合もありますが、基本はすべていま電子決裁になっています。しかし、例えば土木の起工伺とかで、大量の図面がついてくるものは貼り付けができないので関連文書として紙で回覧したり保存したりしています。3点目の公開基準のことです。これは情報公開に準じて独自の審査基準というのを設けていまして、時の経過の30年ルールを適用する一方で、30年を経過してもなお保護する必要がある情報、たとえば個人情報ですと、学歴とか職歴は50年、国籍、人種、民族、戸籍の情報は80年、重篤な遺伝性の疾病、精神の疾病などは110年を超える適切な年という定めをしていまして、最長140年利用制限をするような審査基準をつくっています。ちなみに先般から報道されています旧優生保護法の個人情報の被覆は、この140年を根拠に個人名だとか個人を特定できるような情報は被覆して提供しています。 Q 現用簿冊の廃棄手続きについて、県民からのパブリックコメントの手続きを導入しているが実際に県民から意見をだされたようなことはありますか。また、公文書館との協議は実効的なものになっているでしょうか。(同志社大学S氏) A まず1点目、実際に県民から意見があったとういことはないです。実際の手続きは公文書館ではなく政策法務課がやっているんですけれども、ないということで確認はとっています。それから、公文書館との廃棄の協議ですけれども、実効的なものということはなにか形式的なものになっていないかというご質問かと思いますが、実際に顔をつきあわせてこれを残しましょうという協議ではなく、リストでやりとりをします。それが実効的なのかどうか自信はないのですけれども、実際には書面でやりとりをしています。 Q 文書の保存年限の設定についてもう少し詳しく聞きたい。保存年限の設定根拠が業務形態に合っていないとは具体的にどういうことなのでしょうか。常用区分について、全簿冊の何%程度が常用区分か、引継間の抜け道になっていないか、の2点。(三豊市M氏) A まず第1点目、保存年限の設定の具体的な話ということですけれども、文書管理規程に文書の保存期間の基準、さきほど滋賀県も出されていましたが、例えば条例等の類型が30年だとか、発注伺の書類が10年だとか、そういう一定の類型はどこの自治体にもあると思います。その項目にぴったりあてはまる文書だといいんですけれども、どれにも当てはまらないというところで規程の中に、例えばちょっと読み上げますけれども、10年保存の中の一番最後に「その他5年を超えて保存の必要があると認められる文書で30年保存に属さないもの」というぼんやりとした規定があり、実際に具体的な項目に合致せずに、この「その他」というところを選んで10年という保存期間を設定し、文書を作成している事例が結構ありました。30年保存にも、5年保存にもこの「その他」の規定があるんですけれども、調査をしてみたら44%も実例がありました。それで「その他」という項目が、ほかの項目と統合したり、ほかの項目から抜き出して新規に作ったり、実態にあったように見直す必要があるのではないかということで今まさに作業をしてまして、先ほど滋賀県が類型の表をつくっておられましたけれど、あんな感じでどんどん文書の例示をくっつけて、誰が担当しても間違いが起こらないようなガイドを作るように見直し作業中です。それから、常用区分が何%ぐらいかということですけれども、数字を暗記してなくてこれは宿題とさせていただきます。数字は確認して御連絡します。抜け道になっていないかということですけれども、基本的には常用というのは台帳とかを想定してまして、ずっと原課で管理している台帳のようなものを想定しています。これも長年常用で管理してきたものというのは公文書館へのちのち引き継ぐ基準もありまして、公文書館に引き継いでいるものもあります。(後日、常用区分の割合について島谷氏から次のデータをいただきました。「常用区分 335冊/全体 22,006冊 ≒ 約1.5% 直近の集計値から」) Q 電子決裁システムで作成した文書データのバックアップの管理とそこに公文書館がどう関わっているのか。(滋賀大学A氏) A 鳥取県は電子決裁システムで決裁をして簿冊に綴り込みます。流れとして、電子決裁システムで決裁を終えた文書というのは施行までの流れが終わると、簿冊に綴り込む作業をする前に処理済みという作業をはさんでいます。処理済みという作業をすると、電子決裁システムから、別の文書管理システムに移行するようなシステムになっていまして、文書管理システムで簿冊に綴られた状態で保存されているという仕組みになっています。基本的に文書管理システムで管理している簿冊というのは簿冊名が公表されています。見えるようになっています。ですので、公文書館に引き継ぐ文書というのは、電子決裁システムにある文書ではなくて文書管理システムにある文書が引き継がれていく。情報の中に、管理場所という項目がありまして、そこを公文書館と変えることで、公文書館に引き継いだことになるようになっています。 Q 文書管理システム内の評価選別はどのようにしていますか。文書管理システム内のデータを移管する場合どのようにしていますか。公文書館長は県職員か、任期はあるのでしょうか、この3点です。(富士通M氏) A 3点お答えします。1点目の文書管理システム内のデータの評価選別方法ですけれども、さきほどの続きで、文書管理システムでは綴られた文書をまとめる簿冊というのがひとまとめになってデータで残されているわけですけれども、基本的に公文書館の職員はデータを見ます。ひとつひとつデータを開いて、この簿冊にはどんなデータが綴られているかチェックします。電子起案だけでこの簿冊が完結していたらいいんですけれども、さきほど言いましたように紙が入っている場合があるので、電子起案だけでは判断できない場合は実際に中間書庫にものを見に行って、たとえば会議の開催通知とかそのあたりは電子起案があったりするんですが、議事録はなかったりとか、あとあとの手続き的なところは紙で綴られたりするので、ものを確認するようにしています。文書管理システム内のデータを移管する場合ということですけれども、文書管理システムからデータを移管していないので、いまのところはしていないというのがお答えです。最後3点目です。公文書館長は県職員です。行政の職員です。私と同じ行政の職員です。ですので、2、3年で異動があります。 Q 最後です。公文書館の職員体制を教えてください。個人情報を含む歴史公文書の利用について審査基準があるとのことですが、どういった基準かおおまかに教えてください、の2点です。(西宮市K氏) A 公文書館の体制ということですけれども、公文書館はおおきく2つ業務が分かれていまして、公文書担当と県史編纂室、この2つの組織を持っています。公文書担当は10名職員がおります。それから県史編纂室も10名おります。その上に総括の課長補佐がいて館長がいてという体制になっています。口で説明するよりお渡しした方がいいと思いますので、おっしゃってください(組織体制については別添「公文書館の概要」を参照)。審査基準のことはさきほお答えしたように、30年を超えてもなお制限をかけた方がいいという情報がありまして、50年、80年、110年、140年といった基準を設けています。重複しますので省かせてもらっていいでしょうか。 (進行)ありがとうございました。続いて滋賀県への質問が9点ほど来ております。 Q 滋賀県公文書管理の条例について新聞報道では事務負担や具体的方法について懸念の声がでていて調整が難航していると言われております。しかし、長期的に見ればレジュメに指摘されているように業務を効率的に行えるとのメリットはあると思います。このメリットが十分に職員間に浸透していないということでしょうか。(同志社大学S氏) A お答えさせていただきます。まず、庁内で調整がうまくいってなかったのは、A3版の骨子がございますが、中ほど左上で作成のところで、職員に文書の作成義務を課すというような規定がございます。義務を課されるとして具体的にどういう義務をかされるのか、具体の運用があまり明らかになっていない状態で施行するのはどうなんだという話がございまして、本日の説明にありました文書作成のさらに詳細について一定の運用の案を説明し、理解をいただいて前に進んでいるというような状態でございます。こうした文書管理のメリット、これは文書主義のメリットとイコールでございます。鳥取県からもありましたように職員の意識というのが今後大事になると思いますので、今後職員の文書管理への理解を深めていきたいと思っています。 Q 県政史料室の職員体制を教えてください。もう1点は公文書管理の基準作りに関し内部各部局から聞き取り調査をされたかどうか、聞き取り調査をされた場合、どういったことが課題としてあげられていたか参考に教えてください。(西宮市K氏) 公文書管理条例がうまく機能するかどうかは原課との連携によるところが大きいと思います。鳥取県県ではワーキンググループを設けて現場の意見を聞いておられたが、滋賀県では作成前の連携、作成後の連携をどう考えているか。職員間内部の連携、職員体制ということでお答え願います。(三豊市M氏) A 一つ目の県政史料室の職員体制ですが、県政史料室には、県職員OB(行政)と閲覧、レファレンス等対応の歴史的文書嘱託員が3名おります。歴史にも詳しく崩し字も読める能力がある人たちです。あと3人、行政文書嘱託員がいまして戦後の行政文書の目録を一生懸命作成していただいております。現在は合計で7名ですが、年年によって変わってくることもあります。閲覧申請がありますと審査をして、県民情報室長の決裁を経て閲覧に供しており、場所は少し離れてはいるんですけれども、県民情報室の中で処理しているという状況です。2点目の公文書管理条例策定の連携等々についてお答えします。本県では公文書管理、情報公開、個人情報の開示を県民情報室で行ってまして、その関係で各実施機関の主管課の係長クラスが集まる調整会議というのを持っています。この調整会議で、その都度都度に意見照会をしたり会議を持ったりしていて、今般、骨子という形でとりまとめをさせていただきました。本年度につきましては、これまでの制定過程で大分苦労がありましたので、各部の次長級の職員を構成メンバーとします公文書管理の庁内検討会議を設置しまして、意見照会や会議により合意形成を図ってきたところです。条例の施行まではこの体制でやっていきたいと考えています。条例制定後の運用につきましては、次長級の会議ではなく、主管課係長クラスの調整会議で課題などについて運用面での共通理解を図るための会議を開催することを今の時点では考えています。 Q 廃棄時の第三者機関について、設置はどのようにされるのか。また、条例成立後、公文書館のスタッフは増強できるのでしょうか。(滋賀大学A氏) A A3のポンチ絵を御覧いただきたいとおもいます。中ほど右に各実施機関からの移管の報告が書いてあります。県民情報室の方から歴史的価値があるものについては移管を求めることとしておりますが、その間に第3者機関を設けるということで、知事の付属機関として設置をする予定でございます。どこから諮問するのか、知事からか各実施機関からかは今後検討して参りたいと考えています。体制につきましては、現在、全国の公文書館に照会をしておりまして、今はお答えしにくいのですが、公文書館ができるまでに検討していく予定です。 Q 現用文書の管理で説明された細かい例示は条例にかきこまれるのでしょうか。それとも、下位規定に委ねられるのでしょうか。(大阪大学S氏) A A3版の図が条例の骨子案ですが、条例については基本となる事項を定める予定です。本日説明させていただいた細かい例示、たとえば文書の類型により30年保存にするといったようなものは、各実施機関が定める文書管理規程で定めていくことになります。条例では、保存期間を定めなさいとか、期間満了後の措置を定めなさいということについて定める予定です。 Q 現用文書の作成管理を例示されてはいるが、所属への指導、研修がたいへんそうだと感じる。そのうえで永年保存の廃止について、保存年限の再設定もしくは再選別はどこがどう行うのか。また、館の業務の中に市町との連携・支援を盛らなくていいのか。(尼崎市M氏) A 永年保存の廃止についてお答えします。保存年限の再設定は当然必要になってくると思います。いま、滋賀県で永年文書になっていますのは、例えば法律関係では30年保存以上については永年になっていますが、現実にその文書が歴史的価値があるかどうかで定まっているわけではありません。ですので、永年文書の中でも再設定すれば、その時に捨ててしまうもの出てくるのではないかと思っています。そこまでは決まっていますが、では具体的にどういう手続きでやっていけばいいのかにつきましては、現在、先行の自治体の具体的なやり方も調査し、働き方改革もあって全部一気にするのは厳しそうなので、その辺を勘案しながら、具体的な方法を検討していきたいと考えています。いずれにしても、条例成立後1年ほど準備期間を考えていますので、条例が成立したら、来春ごろからスタートできるようにと考えております。それと、館の業務の中に市町への連携・支援を盛らなくてもいいかということですが、館の業務につきましては先ほどの説明のとおりの概要でして、今後、いまいただきました意見も踏まえて条例を整備していきたいと考えています。 Q 13ページの点線内を公文書という扱いとしているのでしょうか。公開の範囲は点線内ということなのでしょうか。デジタルアーカイブのイメージはありますか。(富士通M氏) A 文書を作成して公文書を保存する範囲が点線内の文書というイメージをしております。組織共用性について、情報公開条例等で公文書を規定しているわけですけれども、具体的にはこの例にありますように知事にあがっていく協議の過程で示すとこういうことだろうということを、先ほどの調整会議等で延々説明してきました。公開の範囲ということですが、実は文書を作成することと、これを公開することは別の話だ思っています。文書を作成する、そのうえで公文書公開請求があった場合には、情報公開条例の第6条の各号に非公開情報がございますので、これに該当するかどうかの判断をするということです。作成と公開の判断は別物だと考えています。職員のなかには、作成した文書はすべて公開しなければならないという思いを持っている職員もいまして、そういうことになれば会議録も要旨だけになるとか、詳細を残さなければならないのにそういう形にしてしまうようなことにならないよう、公開と作成はちがうのだということをしっかりと説明していく必要があることを、今までの庁内の会議のなかでは感じていました。デジタルアーカイブのイメージですが、ゆくゆくは国立公文書館のようなイメージでございますが、予算の措置もこれからでございますので、できる範囲で、古い文書についてはすでにデータとして持っているものもありますので、これらを上手に活用していきたいと思っています。 Q 最後になります。職員がパソコンで作成した公文書のもととなる電子データについての取扱いはどのようになるのでしょうか。紙媒体ではなくパソコン上のデータの保存等について文書管理としてどのように位置づけるのか教えていただけたらと思います。(栗東市M氏) A 本県でもはっきりとした整理がついてない分野です。電子決裁システムを採用していますが、その中にはいっている電子データについては公文書という形で整理しております。職員のパソコンに入っているデータにつきましては、管理の形態が実際のところあいまいになっていまして、職員個人のデータなのか、それとも公文書としてのデータなのか、はっきりして管理されていないのが実情です。今後、この点につきましては国、先行自治体の事例も参考にしながら、公文書として保存すべきデータの保存方法について一定の考え方を示していきたいと考えています。ですので、いまのところ情報公開請求等々があった場合は個別の判断ということになります。そういった意味でも、あまり管理上としてはよろしくないと感じております。 (進行)みなさんからお出しいただいた質問は以上です。質問をこなしていくということで進めさせていただいてきました。このような形で申し訳ございませんでしたが、ご回答いただきありがとうございます。時間も迫っておりますけれども、報告者から何か追加すること、鳥取、滋賀、相互の間で質問等がありますでしょうか。会場からも特に質問がないようですので第147回例会を終わります。鳥取県の島谷様、滋賀県の中井様、小川様、本日はどうもありがとうございました。 最後に、全史料協近畿部会会長、福井県の江端館長よろしくお願いします。 (会長) 本日、第147回の例会ということで多数お集まりいただきありがとうございます。滋賀県、鳥取県から先進的な公文書の取組について発表いただきました。各県では、公文書館あるいは文書館という形で古文書と公文書、両方扱っている県が多いかと思います。重要な歴史的公文書は貴重な史料となるわけでございますけれども、その基となる公文書が非常に重要であることは、国の森友・加計学園の問題でも明らかになったように思います。今回のテーマは非常に時宜を得たテーマではなかったかと思っております。県民の知る権利を尊重し後々のためにしっかり残していくことがいまここにいる私たちの役割と思っております。本県でも公文書の管理という面では規程はございますが、条例化されていないという現状でございます。また市町の公文書がどうなっていくのか、非常に気になっているところです。今回、先進的な2県の取組をしっかり心に留め置きまして、これからの業務に生かしていきたいと思います。滋賀県の条例が可決成立することを祈念いたしまして、簡単ではございますが閉会のあいさつとさせていただきます。本日はありがとうございました。 (中井善寿 全史料協近畿部会役員、滋賀県県政史料室) |
■参加記■ |
鳥取県・滋賀県の取り組みを聞いて 松岡 弘之(尼崎市立地域研究史料館) 9月19日(水)の近畿部会第147回例会は「公文書管理に関する条例整備について」をテーマとして、滋賀県庁新館第7階大会議室で開催された。滋賀県が庁内や県内外の自治体の文書管理担当所属に案内したこともあって、参加者は63名であった。 まず、島谷容子氏(鳥取県立公文書館)が「鳥取県における公文書管理条例の制定と施行後の状況について」という報告を行った。 鳥取県の取り組み状況は、昨年の全国(神奈川相模原)大会においても、田中健一氏から報告があり、管理条例の制定だけでなく、「鳥取県における歴史資料として重要な公文書等の保存等に関する条例」(歴史公文書等保存条例、2017年施行)が平時・災害時における基礎自治体への支援も含めて、県レベルの取り組みとして高く評価された。今回はこれら二つの条例の検討段階から施行後の実績について報告されたが、特に注目されたのは、本年4月に副知事を長として設置された「公文書適正管理推進チーム」による、文書保存期間の適正化や決裁文書の改ざん防止、電子化を含む保存方法の再検討、さらには2004年に導入した電子決裁システム改修等に向けた取り組みである。全庁的な働き方改革を所管する所管課が事務局となったこのチームは、文書管理の実態調査(抽出)やカイゼン意見募集を踏まえて、年内にも文書管理・文書作成に関するガイドラインの作成や、文書保存期間区分と歴史的公文書等評価選別基準の見直しにつなげる予定であるとのことである。管理条例の制定が起点となって、市町連携、そして現用段階での文書管理の見直しなど、さまざまなレベルでの取り組みが進められていることは大変意義深く、参考になるものであった。 質疑・意見交換 2 続いて、中井善寿氏(滋賀県県民生活部県民活動生活課県民情報室県政史料室)が「(仮称)滋賀県公文書等の管理に関する条例等の制定に向けた検討状況について」として報告を行った。 中井報告は、条例案の全体的な内容や基本的な考え方を説明するものであったが、特に注目されたのは、条例を実効的なものとするために、例えば「条例等の制定改廃経緯」など32項目にわたって作成すべき文書類型とその保存期間や満了後の措置、会議の種別ごとに作成すべき会議録等の明示、事務・事業実績に関する文書の例示など、現用文書の作成に関するガイドラインが周到に準備されていることである。これらの基準作りにあたっては、県民情報室が課長級・係長級の調整会議を開催しながら進めてきたものという。実務的な立場からは事務負担増として敬遠されがちな問題でもある。粘り強く各課との折衝を進めてきた滋賀県もたいへん参考になるものであった。今後、滋賀県では条例案について11月以降にパブリックコメントが実施され、年度内に条例案が議会提案される見通しとのことである。これらの過程で、県民の理解がいっそう進むものとなることを期待したい。 休憩を挟んだ質疑応答では、報告者のお二方に、小川一記氏(滋賀県県民情報室長)が加わった。参加者からは事実確認を含む多くの質問が出され、充実した報告の引き換えとはいえ時間の短さが少々惜しまれるほどであった。国の公文書管理をめぐる諸問題は目を覆うばかりであり、それを批判することは容易いが、しかし足下で旧優生保護法をめぐる問題で万全な対応ができたところがどれほどあろうか。地方自治体においても、行政文書の作成・移管・公開を含む文書管理全体が問われていることに変わりはない。しかし、管理条例という器は所詮器に過ぎず、その実質を確保していくためには膨大な努力とエネルギーが必要となることを二つの報告はまざまざと見せつけたように思う。そうした取り組みを着実に進めている鳥取県と、こうした催しに県民モニターや県内自治体を含む、幅広い参加を呼びかけながら条例化を進めている滋賀県のいずれに対しても敬意を表し、それに続けるよう努力したいと思う。 なお、質疑応答でも運営体制に関する質問があったが、滋賀県職員組合では知事宛に公文書館の専門職員の確保と育成を求める「公文書管理条例等の制定にともなう労働条件の改善について」を9月12日付けで提出している。こうした専門職の配置も含めて、意義ある公文書館の開設を楽しみに待ちたい。 |