去る3月3日,ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州ケルン市の歴史文書館の建物が崩落するという事故がありました。
現在,復旧作業の途上にある同文書館は,特に専門家からの援助を必要としています。
ICAでは会員団体に以下のような呼びかけをしており,全史料協にもメールが届きました(ICAのウェブサイトにも同じ内容のものが載せられています)。
[ICAからの呼びかけ]
3月3日にケルン市文書館の建物が崩落した後,同館のディレクターから援助を求める呼びかけが出されました。その呼びかけ,および,この痛ましい事故に関する情報は,ANCBS(the Association of National Blue Shield Committees)のウェブサイトで見ることができます。
http://www.ancbs.org/images/stories/resources/cologne_en.pdf
ICAでは,ケルン市の仲間が,国際的な文書館コミュニティから,タイムリーかつ適切な援助を得られるよう,世界中の会員(専門家団体)に呼びかけています。 もし,援助していただけるならば,できるだけ早く,ケルン市文書館に直接連絡をお願いします。
―― 上記のリンク先に掲載された報告と呼びかけ(大意) ――――――――――――
※ 正確には原文を参照してください
ケルン市文書館からボランティアの呼びかけUlrich S Soenius博士* から次のような回報が届きました。この中で,博士は,組織的な災害復旧策について説明するとともに,専門家からの援助を呼びかけています。
* Director of the Stiftung Rheinisch-Westfalisches and the Wirtschaftsarchiv zu Koln
ケルン市歴史文書館が見舞われた危機に対する関心は高まりつつある。たくさんの援助の申し出があったので,報告するとともに,援助をどう調整するかをお知らせしたい。 今日,3月8日にアーカイブ危機対策チームが召集された。メンバーは,市当局,歴史文書館,ケルン市消防隊,ノルトライン=ヴェストファーレン州文書館,および,修復専門家の代表者たちで,彼らが,今後の復旧について助言や決定を行なうことになる。
水曜日には,降り出す雨から守るために,瓦礫の大半は防水シートで覆われることになるだろう。瓦礫の上に屋根を拵えるのは,向い側にある学校の安定性に不安があるため,遅れているが,この安定性が確保できれば屋根の建設に取りかかれる。今日現在,瓦礫の3分の1は屋根で覆われて安定しており,残りの部分を覆う屋根は,2,3日の内に建てられると思う。
何をどのようにして救い出したのか(について述べる)。屋根を作り,行方不明者を捜索するために,現場は片付けられたが,最初に消防士たちは,そこから慎重に,かつ熟練した技術でもって,歴史資料を手で掘り出した。それらの資料は,予備的な検査を受けた後,アーキビストら様々な専門家によって現場で梱包され,倉庫への移送を待つか,もしくは,冷凍保管へと回される。
状態はきわめて様々である。ひどく損傷した資料がある一方,ファイル,あるいはボックス単位で完全な状態で残っていて,すぐにでも利用できそうなものもあった。水濡れした資料もあり,これは現場から離れたところにあるホールに置かれている。トラックで運ばれる建物の残骸についても,調査した上で,選り分けを行なう。現在,私たちは,安全で空調があり,歴史資料の保存業務に適した建物を長期に使用できるよう,市当局と協議している。
現在,消防士だけでなく,救助隊員や危機対応の専門家たちも加え,50人のチームが24時間を3交代制で1週間休みなしで働いている。ケルン市文書館だけでなく,他のところからも多くの仲間たちが手伝いに来てくれている。数日中には,マールブルクのアーカイブ学校から学生・教師・その他のスタッフがあわせて50人以上来てくれることになっている。ポツダムの大学からも援助の申し出があり,近いうちに到着するだろう。州内・国内の仲間たちからも,すばらしい支援をいただいている。
ではあるが,今後,数週間は,まだ援助(特に文書館と保存修復の専門家からの援助)が必要である。世界中から援助の申し出があるので,できるだけうまく調整するために,以下に述べるようにそれらを振り分けたい。
1) 保管のための装備について申し出ていただける場合:
LVR-Archivberaturngs- und FortbildungszentrumのDr Arie Nabrings(男性) に連絡をお願いします。寄せていただいた保管用ユニットは,ここで分類されて,歴史文書館に移送されます。
2) 職員(アーキビスト)を派遣していただける場合:
最初に私に連絡をお願いします 。ドイツアーキビスト協会(VdA)の現場での代表者です。同時に にも,忘れずに連絡をお願いします(私たちの仕事が少し楽になります)。その際には,あなたがどのような地位にあるのか,または,どのようなグループなのかについての情報をお寄せください。私たちが必要とするのは以下の情報です。
[お名前,現在の地位,住所,電話番号,Eメールアドレス,経験年数]
宿泊場所を必要とするアーキビストの方の場合,少なくとも3日間はここで過ごすことを見込んでおいてください。そうでなければ,管理上のコストがひどく嵩むことになってしまいます(宿泊についてはこちらでお世話します)。
なお,大きなアーカイブ機関に対しては,専門的な仕事をしている人たちへの監督を特にお願いします。
3) 職員(修復家)を派遣していただける場合:
Bert Jacek 宛てに上記と同じ情報をお送りください。
もし,すでに援助の申し出をしてくださっているならば,再度の連絡は不要である。今,優先すべきなのは,瓦礫から取り出された物の系統的・組織的な復元に取り組んでいるチームに人員を追加することである。この作業が終われば,資料救出の仕事は終わりに向かうことになる。
2009年3月3日に崩壊したのは,ケルン市歴史文書館という組織ではない。以前の所蔵物も新しいものと同じように利用できるような,新しく安全で適切な建物を文書館のために確保することが,私たちの仕事である。ケルン・ライン地方・国(ドイツ),いずれの‘記憶’にも未来はあるだろう。