第27回全国大会は、日本の中央部に位置する長野県での開催となりました。近世には3000を超える寺子屋が存在し、独自の地域文化を形成する中で多くの文書が作成されました。これらの記録史料をもとにして、地域史研究が盛んにおこなわれてきました。また先人が残してくれた歴史資料を保存・展示する博物館や資料館が多いことも特徴です。県内120の市町村にはかならずといってよいほどにこうした文化施設が設置されています。しかしながら史料の利用が優れる一方で、保存に関する配慮に欠ける傾向がありました。この面への大きな転機となったのが、長野県立歴史館の開館でした。
長野県立歴史館は平成6年、県史編さん史料の遺産を引き継ぎ、博物館的機能と埋蔵文化財センター機能・文書館機能をあわせもつ複合館として誕生しました。長野県の歴史資料全体をカバーし、史料保存のセンター機能を担うとともに記録史料とモノ資料との融合の可能性を探る歴史系博物館づくりをめざしています。この点で、昨年度の第26回大会を開催された大分県とも比較検討していただけるとよいかと思います。
さて21世紀の幕開けとなる全国大会を迎えました。史料保存利用機関においては、大きく変化しようとしている社会に応じた、新たな展望が求められています。情報公開や個人情報保護制度、文書の電子化、市町村合併の推進、史料保存利用活動の担い手であるアーキビストの養成など、記録史料に直結する課題が山積しています。このような状況のなかで、昨年度の大分大会以後にも新たな動きがみられます。
新たな時代の史料保存利用活動は、私たちをとりまく状況を正しく認識し、その課題の解決に向けて着実に取り組むことなしには展望できません。そこで、今大会では「21世紀の史料保存と利用」という大きなテーマを掲げました。限られた時間ですべての課題に触れることはできませんが、皆さんとともに考えていきたいと思います。
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