記録遺産を守るために
全国歴史資料保存利用機関連絡協議会【全史料協】
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全体会T
期 日
平成17年(2005)11月10日(木)9:30〜9:45
テーマ
大会趣旨説明
報告者
松本市文書館  福嶋紀子氏
内 容
 第31回全史料協大会は、福井県で開催します。本大会では、昨年の30回記念大会を経て、新たな大会テーマとして「アーカイブズの新時代へ」を掲げました。
 アーカイブズとは、「個人又はその組織がその活動の過程で作成、受領、収集した記録のうち、継続的価値を持つものとして保存されているもの。また、それらの記録を管理、保存し利用に供する公文書館等の機関や施設」 (『公文書等の適切な管理、保存及び利用のための体制整備について−未来に残す歴史的文書・アーカイブズの充実に向けて−』より) と解されていますが、近年は、NHKアーカイブズをはじめ「アーカイブズ」という言葉自体が国民の中に広く浸透し、ごく自然に使われつつあります。アーカイブズの世界は、いまや単に文書館や公文書館の世界のみならず、一般市民の中において無限の広がりを呈しているといっても過言ではありません。私たち全史料協は、この現実を受け止めたうえで、アーカイブズの先達団体として、近年の広がりを見せるこの新たなアーカイブズ像とどのように向き合っていくべきかを考えていく状況にあるといえましょう。
 このような中、近年の特筆すべき動きとしては、昨秋の新潟県中越地震において新潟大学と新史料協を中心とする「新潟史料ネット」によって史料の救済活動が行われ、地域のアーカイブズが地元関係者の手により守られたことが挙げられます。また、京都府立総合資料館や山口県文書館が所蔵する戦前期までの行政文書が、相次いで国の重要文化財に指定されたことは、連続した記録である地方自治体の公文書が文化財としても高く評価された点で注目される動きです。一方、問題点としては、電子政府化・電子県庁化の急激な進展への対応からデジタルアーカイブ化が各自治体で進んでおり、電子媒体の保存が緊急の課題となっているほか、図書館・博物館といった社会教育施設への指定管理者導入の動きが文書館にも波及してきています。
 いずれにせよ、国民の共有すべき文化遺産であるアーカイブズをどのように守り、将来へ残していくのかは、それぞれの立場は異なれど全史料協に集う一人一人に与えられた使命であるはずです。今大会での活発な意見交換に期待します。