記録遺産を守るために
全国歴史資料保存利用機関連絡協議会【全史料協】
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来賓あいさつ
 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会の第32回全国大会の開催に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。
 まず、本日、ここに御参集の皆様方は、公文書やその他の記録の収集・整理、保存及び利用のための実務や調査研究という極めて重要な業務に長く携わっておられる方々であり、日頃の御労苦に対し、心から敬意を表する次第であります。
 今大会においては、「アーカイブスの新時代へ〜理想と現実のはざまで」をテーマとして、研修会や研究会が行われると伺っておりますが、今大会でのご議論の成果をここにご参集の皆様方がそれぞれの立場において生かされることにより、わが国の公文書館制度がますます発展していくことを期待するものであります。
 ただ、残念ながら、アーカイブズを取り巻く環境は人的にも、予算的にも、厳しい環境の下にありますが、公文書館制度の充実を図っていくことは、私どもに課せられた重要な責務であると考えております。
 この認識の下に、私どもの国立公文書館も独立行政法人化後の第U期中期計画に従い、公文書館活動の振興を目指し、今後とも更なる努力を続ける所存です。
 具体的に、国立公文書館を巡る主な動向については、次のとおり五つの項目にまとめてご報告できるかと存じます。
1 本年6月22日に、総理大臣官邸において「公文書等の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会」が開催され、内閣官房長官に対し、公文書等の中間段階における集中管理と電子媒体による管理・移管・保存についての具体的な提言を盛り込んだ第2次の報告書が提出されました。
 その内容は、国民の行政の効率性及び透明性の向上に対する期待の高まりと、電子政府化の急速な進展といった流れを踏まえ、公文書館制度を、時代にあったものへと充実させていく上で、極めて重要な「併用型中間書庫システムの実施」と「電子公文書等の管理・移管・保存に関する実証的研究の実施」に関するものであります。この提言の実現に向けて国立公文書館は目下、鋭意努力を傾注しております。
2 皆様に直接関係のある問題としては、合併市町村の公文書保存問題があります。
 前年度に引き続き、5月の「全国公文書館長会議」において、改めて、地域の貴重な公文書が未来の地域社会とその住民に対するかけがえの無い財産として末永く保存されるよう要望させていただいたところであります。また、当館から働きかけをした結果、6月に総務省から各都道府県知事に対し通知を発出し、市町村合併時における公文書等の保存について適切な対応が図られるよう要請がなされたところであります。
3 次に、公文書館の職員等に対する研修の充実・強化についてでございます。 
 国立公文書館内に「公文書館制度を支える人材育成のためのプロジェクトチーム」を設け、種々検討を重ね、本年度は、特に、国立公文書館の研修プログラムの中核をなす「公文書館専門職員養成課程」において、研修科目群の集中化や情報科学の時間数の拡大等を図るなど、内容の大幅な充実と高度化の見直しが行われたところであります。各アーカイブズの現場での職務執行の環境が厳しい状況にあることはよく承知しておりますが、長期的視点に立って、次代のアーキビスト養成につき、各地の公文書館におかれては、当館の各種の研修プログラムのご活用を図られるよう、格段のご配慮をお願いいたします。
4 国際交流については、本年5月に、当館の招聘により国際公文書館会議(ICA)執行委員会が東京において開催され、その際、「世界の公文書館は今」をテーマに記念講演会が行われました。また、来年2007年10月には、国際公文書館会議東アジア地域支部(EASTICA)総会が日本で開催される予定となっており、現在、その開催に向けての準備が進められているところでございます。講演会やセミナーをはじめとする各種のプログラムを通じて、国内のみならず広く外国の事情に精通していただく絶好の機会だと思います。是非皆様、ご参加下さるようお待ちしています。
5 さらに、国内においても、アーカイブズ関係機関・団体との連携・協力を図り、国内でのアーカイブズ活動に対する社会的な関心を高め、日本のアーカイブズ界の振興を促進するためのシステムを強化すべく、現在、各方面への働きかけを行っているところでございます。
 国立公文書館としては、以上の活動を柱に、今後とも、国や地域社会の記録、そして、そこに住む人々の社会的記憶を歴史資料として重要な公文書という形で未来への共通の財産として、また文化的基盤として継承していくため、国の機関はもとより、地方公共団体等との連携をより一層、緊密化し、わが国のアーカイブズ文化の定着と発展に寄与することに努めて参りたいと考えておりますので、一層のご支援とご協力をお願いいたします。
 以上、長くなりましたが、最後に本日ご参集の皆様方のなお一層のご活躍と全国歴史資料保存利用機関連絡協議会の益々のご発展を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。