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The Japan Society of Archives Institutions Kinki District Branch Bulletin
全史料協近畿部会会報デジタル版
No.73
2021.8.20 ONLINE ISSN 2433-3204

第157回例会報告(シンポジウム)および第29回総会報告

 

2021年(令和3)6月6日(日)
 会場:オンライン開催

テーマ:人が“育つ”・人を“育てる”場の構築
                ―博物館の中の公文書館機能―


 本シンポジウムは、アーカイブズに集う“人”にスポットをあてたものだった。まず「人を育てる史料館―時間をかけて人を育てる覚悟はありますか?―」(『博物館と文化財の危機』人文書院、2020)著者の岩城卓二氏に講演いただき、ご講演を受けて、現職のアーキビストである滋賀県立公文書館歴史公文書専門職員の大月英雄氏と、東京大学文書館助教の元ナミ氏からコメントをいただいた。休憩を挟んで、最後に会場からの質問に答える形での討論を行い、閉会となった。例会参加者は62名だった。


講演 「対話」による「共創」−「市民文書館」に期待すること−

岩城 卓二(京都大学人文科学研究所教授)


岩城卓二氏の講演

 岩城氏からは、「『対話』による『共創』−『市民文書館』に期待すること−」として、あまがさきアーカイブズ(地域研究史料館―以下史料館とする)のこれまでの姿とこれからのあり方について、利用者および研究者の視点からお話しいただいた。史料館(現あまがさきアーカイブズ)がこれまで「市長・幹部」「専門委員」「職員」「市民」と上下の関係がなく対話をおこなってきたことについて触れ、複数の「対話」の場があり、それぞれの「対話」を集約するのが史料館の職員だったと述べた。史料館の事業は、「対話」が複合した「共創」であり、市民と職員間でおこなわれるレファレンスだけを指すものではない。よって、職員は主体性を持った専門職でなければならない(研鑽を積み重ねつづけないといけない)とも指摘された。また、“地域研究”の看板を下ろしても、その理念は引き継いでほしいとのこれからへの期待も述べられた。

コメント1「「人が“育つ”場」に求められるもの

大月英雄氏(滋賀県立公文書館)


大月英雄氏のコメント

 一方、大月氏からは、「『人が“育つ”場』に求められるもの」として、滋賀県立公文書館の取り組みについてご紹介いただいた。特に、滋賀県公文書等の管理に関する条例(2020年4月施行)第29条で「人材育成」を明記し、歴史公文書専門職員を配置、給与面等の待遇を改善したことについては、後半に行われた議論にもつながった。


コメント2「「人」は育ちたい」

元ナミ氏(東京大学文書館)


元ナミ氏のコメント

 次に、元氏からは、「『人』は育ちたい」として、あまがさきアーカイブズ及びアーキビスト全体の人材育成への問題提起があった。要求されるスキルの高さと待遇の乖離についての言及は、大月コメントにもあったことであり、業界全体の抱える課題でもある。また、特にあまがさきアーカイブズのように業務が多岐にわたる館では、人が育つために必要な時間を確保し、育つまで待つ姿勢がないと、新入職員は育つ前に離れてしまうのではないかとの指摘があった。



討論の様子

 これらをうけて会場から質問を募り、後半のディスカッションとなった。進行は、あまがさきアーカイブズの辻川と吉川が担当した。ディスカッションでは、アーキビストの待遇や雇用形態、専門職の扱い等への言及が多く、アーキビストをとりまく課題が浮き彫りになった。筆者は進行のひとりだったが、一参加者として、入庁2年目の職員として、岩城氏の講演に襟を正しつつ、大月コメントに共感し、元コメントに大いにうなずきながら聞かせていただいた。今後も折に触れて、参加していただいた他館の方々の取り組みや考えもお聞きし、日々の業務に役立てていきたい。

       (編集:吉川真理子 近畿部会事務局、尼崎市立歴史博物館“あまがさきアーカイブズ”)


参加記

全史料協近畿部会第156回例会「人が“育つ”・人を“育てる”場の構築―博物館の中の公文書館機能―」参加記

大木悠佑(独立行政法人国立公文書館)

 公文書館には様々な人が関わる。利用者や組織の運営に関わる職員、そこに含まれる専門職が代表的なものとして挙げられる。本会は、その「人」が育つ(育てる)場としての公文書館に焦点を当て、オンラインで開催された。筆者は関東に在住しているが、オンラインでの研究会は、こうした地理的な要因の影響を受けず参加することができる。研究会後の飲食を伴う懇親会に参加できないことは大きなデメリットであるが、より多くの参加者が容易に参加し、活発に議論が交わされることは、オンライン研究会のメリットだろう。ここでは、それぞれの講演、コメントを踏まえつつ、筆者の経験から感じたことを述べて、参加記としたい。なお、本会には一個人として参加しており、本文中の意見はあくまで筆者個人の見解である。
 岩城卓二氏の講演では、尼崎市立地域研究史料館(現尼崎市立歴史博物館あまがさきアーカイブズ)の「市民文書館」の取組みとして、レファレンス事業を媒介としつつ、市民と職員等による双方向的な「対話」を通じて実践されてきたことの意義が指摘された。大月氏と元氏からは、そうした公文書館の中心的な役割を果たす専門職員(アーキビスト)が「育つ」(育てる)場に対する課題と期待について、経験を踏まえた視点から、端的なコメントがあった。国立公文書館によるアーキビストの認証が始まり、専門職員としての「アーキビスト」に注目と期待が集まっているなか、本会でも、こうした専門職員の「育つ」「育てる」に関する意見や質問が目についた。筆者も大月氏と同様、いくつかの公文書館等で非常勤職員として勤務した経験があり、任期的な問題で、短期間で別の職場に移ったり、時には望んだ業務やスキルを積み重ねられなかったりした経験がある。こうした中で、専門職員が「育つ」場とはどのような場所であるべきか、議論され、整備されていくことは望ましいことと感じる。
 しかし、言うまでもなく課題は多い。本会を聞きながら、筆者が感じた課題を以下に挙げる。一つ目として、様々な公文書館が「育てる」場となるためにはどうすればよいだろうか、という点である。特に、元氏が紹介したようなLone Arranger(一人ですべての業務を担う専門職員)である場合、指導・助言ができる先輩職員もおらず、その人を育てる環境が整っていないこともありえる。こうした職員を育てる環境をどのように整備し、充実していけるか。難しい課題ではあるが、一つのアプローチとして、大月氏が指摘したような全史料協による職場を超えて専門職がつながるネットワークづくりの充実と、そこに参加し、本会のような研究会等に継続的に参加できる環境づくり(や働きかけ)が挙げられる。
 二つ目として、教育課程との連結をどう考えるか、である。報告や質疑の中でもあったように、それぞれの機関の背景等がある中で、求められる能力はそれぞれ異なる。筆者も一様の仕組みを構築する必要はなく、OJTでその館に必要な知識とスキルを蓄積していくべきと考える。しかし、一方で、どこの機関で働くにしても、最低限必要となる基本的な知識や考え方、態度はあるはずである。各機関で働きながら習得していくもの、高等教育機関で体系的な教育を受けて得るものの整理の視点であり、専門職員を養成する課程やコースの設置が増え始めている今、改めてその連結部分を考える必要があるだろう。
 上記で指摘した点は、一人のアーキビストとして、どのようにキャリアを形成していくか、というイメージを描くことにもつながっている。公文書館等の設置、専門職員の配置(非常勤ではあるが)が増え、「高等教育機関を出た時点でこういう知識を持ち、●●機関で勤めて、××の経験を積み重ね(必要に応じて転職し)、日本アーカイブズ学会や国立公文書館によって、アーキビストとして登録/認証され、△△に強みを持ち、精通したアーキビストになっていく」、という絵が少しは描けるようになったと感じている。もちろん、先はまだまだ長いだろうが、こうしたモデルが示されていくことで、専門職としてのアーキビストの周知や今後の後進の育成にもつながっていくだろう。
 以上、浅学な筆者からの瑣末な私見ではあるが、今後の議論の種になり得れば幸いである。最後に、元氏の次のコメントを引いておきたい。「アーキビストとしてアーカイブズで育ちたい、そしてアーカイブズを支えたい」。筆者も全く同じ思いである。そして、司会吉川氏のコメント「人を育てるには、時間のかかることであり、のんびり見ていただきたい」にも大いに賛同するところである。ゆっくり歩く自分にとって有難い言葉であるが、たとえ歩みが遅くても、アーカイブズで育ち、アーカイブズを支えるアーキビストであり、そうしたアーキビストを育てる仕組みに貢献したい、改めてそうしたことを考える有意義な会であった。


シンポジウム「人が”育つ”・人を”育てる”場の構築−博物館の中の公文書館機能−」参加記

上甲 典子(亀岡市文化資料館)

 第156回例会となるシンポジウムは、総会に引き続きZoomミーティングを利用したオンライン開催で行われました。画面で知る限り60人余の参加がうかがえ盛況であったと思われます。コロナ禍の中でもこのような情報に触れ交流の場に参加することができたことを、特に個人会員として嬉しく思います。企画いただいた事務局、関係者の皆様に深く感謝いたします。
 今回のシンポジウムでは、「人」(アーキビスト・利用者)をテーマにされたこと、そして「場」としては「博物館の中で公文書館機能」を持つ施設を事例とされたことを意識して参加記を書きたいと思いますが、オンラインでの拝聴ということで油断(?)しており、なにぶん個人の興味に傾くことをご容赦いただきたいと思います。
 最初に、岩城卓二氏(京都大学人文科学研究所教授)によるご講演「「対話」による「共創」−「市民文書館」に期待すること−」では、尼崎市立地域研究史料館の45年(1975−2020)にわたる長い活動より“人”が育つ“場”を紹介されました。同館が設立された経緯、目的や理念、「市民のために」のズレから生じた挫折、「市民のために」の気づき、職員と市民の対話としてレファレンスの重視、対話に関わるそれぞれの主体性、成熟した職務へという軌跡は、全国でも有数の「市民文書館」である現在の地位を表すものでした。
 学生時代からのユーザーでもあり、研究者として同館の専門委員も歴任される氏は、同館の活動の詳細な観察と緻密な分析をすでに公表されていますが(「人を育てる史料館−時間をかけて人を育てる覚悟はありますか?」『博物館と文化財の危機』人文書院、2020年)、今回の例会では、史料館とともに歩んできた「人」の一員であることを強調されたお話であることも知り得て改めて感銘を受けました。 岩城氏の講演は、アーキビストと利用者の双方の「人」を対象とされたものでしたが、続いては、アーキビストとしての「人」に注目したお二人の方のコメントをお聞きしました。
 まず、お一人目の大月英雄氏(滋賀県立公文書館歴史公文書専門職員)は、「「人が“育つ”場」に求められるもの」と題し、専門職員の雇用条件に注視したコメントを行われました。尼崎市立地域研究史料館を全国で代表するアーカイブズと位置づけ、職員体制について専任職員と会計年度任用職員共に経験豊富でスキルを積んだ職員であり、報酬や継続雇用などの諸条件も先進的であると高く評価されました。そして、滋賀県における課題を提示され、公文書管理条例の制定(2020年4月施行)と公文書館の開館に伴って行われた雇用条件の改革として、歴史公文書専門職員としての職務内容に見合った報酬増額や継続雇用、研修への参加保障などが実現したことを報告されました。同時に、専門職員の職務水準の向上に合致する「認証アーキビスト」も順次取得されているそうです。このような専門職員の雇用改革の実例を知る機会は珍しく、貴重な報告として参加者の注目を浴びていました。詳しくは例会後に公表される『記録と資料』第32号(2022年3月刊行予定) に掲載予定とのことで、そちらもぜひ拝見したいと思っています。
 お二人目の元ナミ氏(東京大学文書館)のコメントは、アーキビストの人材育成に注目したものでした。尼崎市立地域研究史料館の活動を、丁寧で充実したレファレンスを中軸にすえており、高度な専門性と経験の蓄積によるものと高い評価をされた一方で、アーキビストはすべてに精通したスーパーマンのようであり、ストイックに業務に邁進する姿を見て疑問も提示されました。「文書館事業・業務全体を把握できる機会の提供、職員自らが取得したい専門性の確認と指導、日々の業務・活動から生まれた疑問等に対する調査・研究時間の確保」等々。最もわかりやすく表現されたのは、すぐに能力有る職員としてキャリアをもちたいけど、一方で、楽しく学ぶことができる職場でなければ(働きたい職場とはならない)という発言です。ご自身も「青臭い考えと思われるかもしれないけれど」と断ってのことですが、多忙な日常の業務に真面目に対応した結果、多くの人々が封じ込めている思いでもあるとともに、特に教育機関で育ちつつある若いアーキビストらの共通の認識であるのだろうと思いました。「アーキビストとしてキャリアアップできる機会保障」を求められています。
 続いての質疑応答では、アウトリーチの対象としての「市民」「利用者」の対象や幅の設定について、アーキビストの待遇の問題、アーキビストと歴史研究者について、歴史的公文書を利用してもらうための能力、アーキビストはスーパーマンでなければならないのかなど、活発な質疑が交わされました。
 最後に、個人的な感想を述べてみたいと思います。アーキビスト・利用者など「人」についての議論は、各館によって事情が大きく異なります。そのため今回のように一般化されるアーキビストの理想像と、具体的な雇用条件や人材育成などを対比しながら検討してみることは有効だと思いました。また、レファレンスが利用者との対話として重視される点には深く同感した上で、最近、増加しているメール等でのレファレンスでは、利用者とどのように対話を保っているのか具体例を伺ってみたいところです。そして、テーマに少しだけ付け加えられた「場」の話には今回は議論が及びませんでしたが、非常に興味があります(引き続き、今後の例会テーマとして取り上げてくださることを期待します)。多くは組織や建物の「統合」の影響を受けた形かと思いますが、小規模自治体の宿命的な課題です。歴史関係部署として同じ様に歴史的素材を扱うものの、目的や機能は異なるため、業務は簡単に統合できるものではありません。各機能を維持する場はどれだけ確保できるのでしょうか。日々の業務で培ってきた「対話力」は、組織が直面する重大な場面でも威力を発揮するのかもしれません。現実はままならないものですが、地域史料館愛にあふれた岩城氏の講演は、同館が大きな変革期を向かえた今、公共機関が一人歩きすることなく「対話」が複合した「協創」であるための示唆であったと思います。


シンポジウム参加記

橋本 陽(京都大学大学文書館)

 「結局何がテーマだったのだろう」。これが本会に参加した私の感想である。そう思うにいたった経緯を参加記として記したい。
 本会の目的は、次の2点であった。1つ目は、「人を育てる史料館―時間をかけて人を育てる覚悟はありますか?―」(『博物館と文化財の危機』人文書院、2020年)を執筆した岩城卓二氏の講演により、利用と公開の観点から、利用者とアーキビストが相互に育成される場としてのアーカイブズを考えることである。2つ目は、講演に対し、大月英雄氏と元ナミ氏がコメントを加えることで、利用と公開について議論することである。
 岩城氏の報告では、尼崎市立地域研究史料館(現、尼崎市立歴史博物館あまがさきアーカイブズ)の事例から、「私たち」による「共創」のモデルが提示された。「私たち」とは、市長・幹部と研究者が務める専門委員、専門委員とアーキビストである史料館職員、その職員と市民が行う異なる双方向の「対話」の複合によって生み出される。「共創」は、「対話」を行うそれぞれが主体性をもちながらも他者を尊重することで実現される。この「共創」の中で、アーキビストは「私たち」を成熟させる重要な役割を担っており、その成熟には公文書の保存により行政を検証できる環境が不可欠である。さらに、アーカイブズとアーキビストは、公文書だけでなく多種多様な資料を残すことで、未来への責任を果たすことができる。
 岩城氏のモデルは、玉稿「人を育てる史料館」よりも大きな枠組みでアーキビストの役割を捉えている。「人を育てる史料館」では、レファレンスの中で行われる市民とアーキビストの「対話」を通じたアーキビストの育成について述べられたが、今回の報告で示されたモデルは他の主体を含むさらに大きな「私たち」を含んでいる。しかし、「私たち」の中の市民とアーキビスト以外の「対話」が、利用と公開の観点からこの両者が相互に育成される場としてのアーカイブズを考えるという本会の1つ目の目的とどう絡んでくるのかを理解することができなかった。例えば専門委員は、利用者とアーキビストの育成にどのような影響を与えているのだろう。このような論点が明確に示されなかったため、「私たち」のモデルと育成の関係性を読み取ることができなかった。
 次に疑問に思ったのは、「対話」を担うアーキビストに「私たち」が払う対価についてである。「私たち」の中で、アーカイブズに専業として従事するのはアーキビストだけであるが、一般的にその雇用条件が恵まれたものではないことは周知の事実である。そのような状況で働く職員に対して、専門職としての役割および育成を共有できるほどの充実した「対話」を一方的に求めていいのだろうか。公正に見て、対価相応の職務しか要求するべきではないし、対価以上に育つかどうかは本人の意志に委ねるしかない。
 この疑問に答えてくれたのが、大月氏と元氏のコメントである。大月氏は、滋賀県立公文書館における育成の取り組みについて職員の報酬額にも言及しながら紹介した。職員は、嘱託員から会計年度任用職員となったことで、従来よりも給与が上昇したことに加え、アーカイブズの研修に参加されることも保証されている。特に研修参加に関しては、昨年度2名の職員が「認証アーキビスト」に認定されるという成果があった。このことを踏まえ、大月氏は、待遇面も含め、「認証アーキビスト」になるまでの長期的な視野をもった育成方法が職場に求められるし、さらに職場を超えた育成のネットワークを全史料協が提供するべきであると述べた。
 元氏は、「人」は育ちたいものであると主張し、その主体性を喚起あるいは維持するための場所を作るべきであるとの見解を示した。アーキビストが取得したい専門性を獲得し、業務から生じる疑問を研究するための時間の確保、あるいは十分な待遇条件の保証などキャリア形成のための機会を提供できる雇用環境が求められると述べた点は、大月氏と共通するところである。
 大月氏と元氏の意見には完全に同意するが、公的機関への支出が減少し続ける日本の現状にあって、その実現は簡単ではない。一つ妄想を述べるとすれば、大月氏の言う職場を超えた育成のネットワークが、欧米型の職種別の労働組合を兼ねてはどうだろう。そこで、雇用主に対し、元氏の提案するような「人」が育ちたい状況を得られるよう交渉するのである。交渉が決裂した際には、全国のアーキビストが一斉にストライキをする。そのような活動を経てようやく「私たち」が形成する社会は、アーキビストが存在する正当性を認めるようになるのかもしれない。
 最後になるが、本会の2つ目の目的であった利用と公開について、大月氏も元氏も言及はしたが、あまり多く議論されなかったような印象を受けた。利用、公開、育成とは、それぞれ個別に議論できそうな大きなテーマであり、それらを同時に議論すること自体に無理があったのかもしれない。
 以上が「結局何がテーマだったのだろう」と私が感じた理由である。




全史料協近畿部会第29回総会の概要

 全史料協近畿部会の総会は、第156回例会シンポジウムに先立ち、午前11時から約1時間Zoomを利用したオンライン開催で行われた。参加者は16名であった。
 まず、近畿部会14期会長の尼崎市立歴史博物館長伊元俊幸氏あいさつで始まり、15期(令和3・4年)の役員を承認を行った。役員は下記の通り。
会 長 石尾 和仁  徳島県立文書館(機関会員)
副会長 伊元 俊幸  尼崎市立歴史博物館(機関会員)
委 員 *姫川 祐一  福井県文書館(機関会員)
    *笹之内 浩一 三重県環境生活部文化振興課(機関会員)
    金山 正子  (公財)元興寺文化財研究所(機関会員)
    島津 良子  奈良女子大学(個人会員)
    石田 政則  滋賀県立公文書館(機関会員)
    *井口 和起  京都府立京都学・歴彩館(機関会員)
監 事 田中 万里子 池田市立歴史民俗資料館(個人会員)
    和田 義久  枚方市観光にぎわい部文化財課市史資料室(個人会員)
     (内*印は新任)
 次に令和2年度の事業報告及び、会計報告が行われた。新型コロナウィルス感染症拡大予防のため、令和2年度の総会・役員会は開催を中止し、書面会議となった。 2回目の役員会及び運営委員会はZoomを利用したオンライン会議での開催となった。
 例会の開催は、6回を予定したが、5回を中止せざるを得なかった。その中で3月18日(木)に行った、関東部会との合同開催となった第155回例会は、Zoomを利用した開催を行うことができ、今後の例会開催のあり方を広げるものとなった。中止した例会のうち延期が可能なものについては、次年度に延期して開催する予定である。会報及び月報も例会活動に伴い刊行されるので、それに合わせての刊行となった。会員数は機関会員が1つ増となった(追手門大学大学院志研究室)。また、会費支払いの厳密化により、個人会員7名が除名となった。事業内容と決算については一括して承認いただいた。
 次に、会の運営を担う運営委員の承認を行った。運営委員は下記の通り。
    井口 和起   福知山公立大学(個人会員)
    大月 英雄   滋賀県立公文書館(機関会員)
    佐藤 明俊   奈良県立図書情報館(個人会員)
    島田 克彦   桃山学院大学(個人会員、大学は機関会員)
    島津 良子   奈良女子大学(個人会員)
    曽我 友良   貝塚市郷土資料室(個人会員)
    服部 光真   (公財)元興寺文化財研究所(機関会員)
    *橋本 陽    京都大学大学文書館(個人会員)
    *若林 正博   京都府立京都学・歴彩館(機関会員)
     (内*印は新任)
 最後に、令和3年度の事業計画と予算案の承認を行った。総会1回、役員会1回、運営委員会2回、例会6回を予定している。この総会はZoomによるオンライン開催となった。今後、状況を見ながら開催の方法等を検討しながら進めていく。会報『Network-D』および月報「Monthly News」のデジタル版での発行は、今後も着実に行っていく。例会については、昨年度延期された例会を中心に開催していく予定だが、Zoomによるオンライン開催を視野に入れながら、柔軟に対応していく。
 また、近畿部会副会長事務局(尼崎市立歴史博物館)を中心に、デジタルアーカイブの基礎研修(4回を予定)、オープンソースAtoM(アトム)を利用したデジタルアーカイブの試行を行う。さらに、関東部会と合同で、市町村の文書に関する例規を読む研究会を立ち上げる予定である。事業内容と予算は、上記の通り承認いただいた。研修の開催・Zoomの管理などを行う副館長事務局への励ましの声があった。総会は、滞りなく終了した。
                  (編集:金原祐樹 近畿部会事務局、徳島県立文書館)