記録遺産を守るために 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会【全史料協】

平成14年度 資料保存委員会






文書館防災の手引き





[会議報告]

◇平成14年度第1回委員会

□日 時 2002(平成14)年5月19日(土)午後1時〜午後5時
□場 所 松本市文書館会議室(長野県松本市和田1058の2)
□出席者 委員4名 小松芳郎、伊藤然、大西愛、小川千代子、(2名欠)、事務局1名 福島紀子

1.報告事項
 第1回役員会の報告

2.協議事項
 自治体史資料保存状況についての調査結果の集約について
  @3月の関東部会との共催による中間報告会に続いて、6月14日近畿部会で調査結果の集約について報告会をおこなう。
 市町村合併にともなう公文書保存についての取り組みについて
  @アンケート葉書の文案について
   発信者を資料保存委員長とし、会の案内パンフレットは会長事務局で作成してもらい、葉書と一緒に発送する。葉書文案は事務局で作成して委員に送る。発送は、7月9日の予定。
  Aアンケートの集約と報告
   中間報告会を8月に関東部会例会として、松本市文書館でおこなう。最終的な結果報告は、10月の富山大会の場でおこなう。

 研修会の実施について
  @大会研修会の場に資料保存委員会の研修枠を設けてもらって、継続的な資料保存研修をおこなうようにお願いしたい。富山大会では青木委員に担当を依頼する。
  A地域部会との共催研修会
  ・史料ネットのその後の活動を報告してもらってはどうか。災害時とその後の資料保存をめぐる考え方の違い等について。
  ・記録管理学会にファイリングシステムの変化について利用する側の意見を盛り込んだ報告をお願いしてはどうか。8月頃までに検討していく。

 『市町村合併と資料保存』の編集、刊行
  @委員会として予算を計上した。
  Aブックレット形式で刊行することはできないか。

 その他
  @次回委員会は、8月の関東部会との共催研究会の前日におこなう。

【報  告】

1.資料保存研究報告会(第194回関東部会月例研究会)
 テーマ 「自治体史編纂と資料保存アンケートの中間報告」
 日 時 平成14年3月16日(土)午後2時から5時
 会 場 千葉県文書館多目的ホール(千葉市中央区中央4−15−7) 
 共 催 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会資料保存委員会・同関東部会
 目 的 全資料協資料保存委員会が、各都道府県にたいして平成13年8月に実施した「管内市町村の自治体史刊行状況調査」及び平成14年1月に実施した「自治体史編纂と歴史資料保存状況についてのアンケート調査」を集約しつつあります。関東部会の3月月例会にあわせて、このアンケート結果の中間報告をし、会員の意見を広く聞くなかで、アンケート結果を報告書にまとめていくための一助とします。あわせて、自治体史編纂と資料保存について、会員相互の意見交換をはかります。
 日 程
  14:00 開 会 資料保存委員会 伊藤然(草加市史)
  14:05 開会挨拶・経過報告 資料保存委員会委員長 小松芳郎(松本市文書館長)
  14:20 報 告 「自治体史編纂と資料保存に関するアンケート中間報告」
  資料保存委員会事務局 福島紀子(松本市文書館)
  15:45 質疑応答・意見交換
  16:45 閉会挨拶 関東部会会長 嶋津辰次郎氏(千葉県文書館長)
 所 感
   当日は、自治体史編纂との関わりもあることからか、参加者は24人でした。遠くは沖縄県名護市の市史編さん室や、仙台市の市史編さん室からの参加もありました。データの分析方法について参加者からの意見を求めること、今後の集計と最終報告段階でのまとめ方についての意見を求めることを目的とした報告会なので、具体的な数値の報告が中心となりましたが、アンケートから導き出せる現状での問題点について、相互に検討し合うことができました。
   市町村史編纂の完了のピークは、1980年代で、編纂事業のおこなわれた自治体のうち約四分の一がこの年代に完了を迎えています。1970年代以降に編纂事業がおこなわれた市町村のほとんどが、原文書の所在確認や、写真などの複製による史料収集作業をおこなっていることがわかり、それらの資料は編纂事業の完了後もほとんどの自治体で保存しています。ただし、中には保存スペースの問題から廃棄を余儀なくされたところもあり、編纂事業がその後の史料保存に大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。
   質疑の中では、文書館関係者のあいだで日常的に使っている用語の不統一の問題が、全国アンケートという調査方法の中で顕在化したことが指摘されました。とくに、「村役場が作成した行政文書」という言い方が、具体的にどのような文書史料を指すのかについて、議論になりました。この点についてはアンケート用紙を各自治体に送付した日から、質問がひっきりなしに寄せられましたが、回答をお願いした市町村の方もかなり返答に悩んだようでした。

2.資料保存研修会
 テーマ 「被災史料の救出と修復」
 日 時 平成14年3月29日(金)午後1時30分から5時、3月30日(土)午前9時30分から12時
 会 場 鳥取県日野郡日野町黒坂 日野町公民館 
 共 催 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会資料保存委員会・山陰史料ネットワーク
 目 的 鳥取県西部地震、芸予地震などの地震に関わる被災史料の救助活動から、日常的な保存管理のあり方を考えます。また、保存・修復の基本を修得し、実際的な保存処理技術の実習をおこないます。
 日 程
 29日(金)
  13:30 開会挨拶 全史料協資料保存委員会 小松芳郎
   内容と日程の説明(司会進行 青木睦)
  14:00 鳥取県西部地震後の史料救出活動と山陰史料ネット 島根大学 小林准士氏
  14:30 広島県における被災資料の救助広島歴史資料ネットワーク代表幹事 久保隆史氏
  15:15 今後の被災史料救助支援のネットワークと日常の保存について 全史料協資料保存委員会 青木睦
  16:15 質疑応答、意見交換
  17:00 閉会挨拶 山陰史料ネット 小林准士氏
30日(土)
  9:30 日常の保存管理・予防的措置、修復処置のワークショップ
   (襖の下張り・壁張り資料の保存修復処置)京都造形芸術大学 尾立和則氏
  12:00 解散
 所 感
   研修会の一日目は、島根大学小林氏と、これを技術的にサポートした京都造形芸術大学の尾立和則氏、資料保存委員会委員の国立史料館青木睦氏が、活動経過や実践的な取り組みについて報告しました。また、安芸灘地震で被災した史料の救出に当たった、広島史料ネットの中核となる久保隆史氏が、広島での活動成果を生かして、島根で実践した経過などについて報告されました。
   翌日は、京都造形芸術大学の尾立氏が、被災した家から運び出された襖から、下張りに使われている文書を剥がす方法について、実際に襖を使いながら講習会をおこないました。
   参加者は35人で、地元の方たちの参加も多く、また活動に関わった学生の方たちが研修会をサポートしました。特に襖の下張りを剥がす作業は、被災史料の救出という視点以外でも関心が高く、参加者の興味を引きました。鳥取史料ネットの活動は、現在でも継続しており、散逸史料の調査や、被災した襖の下張り文書の摘出調査がおこなわれています。

【平成14年度事業計画】

1.委員会の開催
  @第1回 平成14年 5月19日 松本市文書館
  A第2回 平成14年 8月23日 松本市文書館
  B第3回 平成14年12月 国際資料研究所
  C第4回 平成15年2月 松本市文書館

2.資料保存情報の収集
  @全国市町村への資料保存アンケートの実施
  Aアンケートの集約

3.資料保存についての冊子の編集、刊行
  @『市町村合併と資料保存』の編集と刊行
  ・自治体史編纂と資料保存アンケート結果
  ・市町村合併と資料保存について

4.資料保存研修会の実施
  @時期 平成15年1月

5.被災資料情報の集積
  @情報の集積
  A情報の提供

6.防災研修ビデオの販売
  @宣伝と普及
  A頒布

7.その他
  @『資料が燃えた−その時あなたは−』、『文書館の防災に向けて』の販売
  A『書庫の救急箱』の普及活動



◇平成14年度第2回委員会
□日 時 2002(平成14)年8月25日(日)
午前8時30分〜午後1時
□場 所 松本市文書館会議室
□出席者 委員4名 小松芳郎、伊藤然、大西愛、小川千代子、(2名欠)
事務局1名 福島紀子
オブザーバー1名(中村修)

1.報告事項
 (1)市町村合併にともなう公文書保存アンケートの実施について
 (2)3月の資料保存報告会報告を『アーキビスト』へ、資料保存研修会報告を『会報』へ掲載
 (3)8月24日開催の資料保存研究報告会の総括、反省、記録のまとめ方について

2.協議事項
 (1)市町村合併と資料保存アンケートの集約と富山大会での報告について
報告の流れ、構成等を協議。
報告レジュメ素案を作成
 (2)『市町村合併と文書保存』の編集と刊行について
 印刷出版について業者による見積もりを検討。アンケート結果のデータを紹介することから、アンケート発送先で結果を知りたい旨申し入れている自治体が多い。業者の試算する購入者以上に関心を持つ人は多いと思われるので、その旨を伝えて見積もりの再検討をお願いする。規模・企画はブックレットの体裁に従う。
 (3)資料保存研修会の実施について
 神戸市の「人と防災未来センター」を会場に、関西の史料ネット関係者に阪神淡路大震災の史料収集活動を取りあげてもらってはどうか。
 会場の設営、期日の設定は小川委員に、報告者との連絡調整は大西委員に依頼。
 次回資料保存委員会で最終決定し、会員へ通知を発送する。
 (4)富山大会に向けて
@全国大会の研修会報告として、今年度より資料保存委員会で報告枠を設け、継続的に会員に対して情報を還元できるよう研修会をおこなう。
  A資料保存委員会から全国大会総会で報告する事項についての確認
 →委員会として大会研修会を分担することも、総会の場で報告した方がよい。
  B日本図書館協会資料保存委員会の研修会「利用のための資料保存環境問題を考える」
 →親会から日図協へ共催のために文書を出すよう依頼する。
 通知パンフレットを会報発送時に入れて、会員へ周知してはどうか。次回会議の時に日図協関係者を呼んで、今後の連携について話してみてはどうか。
 (5)その他
@総務省に対して、通達のお礼をしてはどうか。→役員会で図ってほしい
  A次回委員会は、11月20日(水)に東京都で開催。

[報 告]

1 全国の市町村に「市町村合併時における公文書の保存についての調査」を実施

2 資料保存研究報告会(全史料協資料保存委員会研究報告会・第199回関東部会月例研究会)



◇平成14年度第3回委員会
□日 時 2002(平成14)年11月20日(水)午後1時30分〜午後5時
□場 所 松本市文書館会議室
□出席者 委員5名 小松芳郎、大西愛、小川千代子、小川雄一郎、伊藤然
事務局1名 福島紀子
オブザーバー1名(佐々木和子)

1.報告事項
(1)資料保存研究報告会(8月24日)の報告→会報62号へ掲載
(2)資料被災の報告(9月14日)
鳥取県公文書館より、史料所蔵者宅の火災により被災した史料の救出が行われたことが報告された。日頃から図書館・博物館などと史料についての勉強会を持ち、情報を共有のものとした方がよい。研修会で事例について情報提供をお願いしてはどうか。

・協議事項
(1)資料保存研修会の実施について
 平成15年1月30日(木)午前10時から午後4時30分、「人と防災未来センター」(神戸市)にて開催。
 当日の会場の確保と参加人数の把握(小松委員長・大西委員が下見をしてから方法を検討する)。
 全史料協近畿部会に共催の依頼をする。案内の発送対象は、全史料協会員、近畿部会員、関係者には佐々木和子氏にリストを作成していただき送付。記録管理学会等へ連絡。
 通知文は12月中に発送し、年明けに返送するようにする。
 午前中は見学、午後の報告は、奥村弘氏:「災害と資料・保存と公開」、佐々木和子氏:「兵庫県における震災史料調査事業と今後の課題」に依頼する(人と防災未来センターの方にも報告をお願いしたい)。報告は、ボランティア団体の活動から国と県の施設への移行の経緯にはどのような事情と意図があったのか。史料ネットの活動が山陰や安芸灘地震などの被災史料の救出に広がっているという事実を踏まえてお願いしたい。
*研修会の下見のため、小松委員長と大西委員が、12月17日(火)に「人と防災未来センター」を訪問、打合せをした。

(2)『データに見る市町村合併と資料保存』の編集と刊行について
 規模・企画・発行部数・予算については岩田書院へ依頼、了解済み。
 アンケートの集計中、もっとも重要で、関係者が知りたいのは居住地域の情報であるから、グラフデータ、数字データとは別に県別のデータブックとして使えるよう、県別のデータを見開きで載せてはどうか。
 富山大会での報告を前半に載せて、あとはデータブックとなるような構成にしたい。
 自治体史アンケートの返事がない都道県については、再度アンケート調査を実施して、なんとか本書に収録したい。

(3)富山大会についての反省
 自分たちの仕事について内面にむけた反省の機会があまりなかったのではないか。今後大会等の場で、自分たちのよって立つ位置を再確認する試みは継続される必要があるのではないか。
研修会と全国大会は一体化したものにしてほしい。大会テーマとの整合性を考えた研修会にしてほしい。
 デジタルアーカイブの問題について、情報管理と文書管理の視点がないのではないか。一方では業者介入による情報管理が行われている。従来の視点とは違った、発生段階からのアーカイビングの視点を持たないと、紙資料のみを対象とした検討方法では、文書館の手元に届く前に文書は失われてしまう。大会時の質問にあったデジタルアーカイブの消滅のあり方についてのアプローチと視点がない。注意すべき点は何かというガイドラインが必要ではないか。
 デジタルアーカイブの残し方の実態がわからない→担当者にも参加してもらってのディスカッションが必要ではないか。

(4)その他
次回委員会(今年度第4回)は、3月9日に神奈川県藤沢市で開催。



平成14年度第4回委員会

□日 時 2003(平成15)年3月9日(日)午後1時〜午後5時
□場 所 国際資料研究所(神奈川県藤沢市辻堂東海岸)
□出席者 委員全5名 小松芳郎、大西愛、小川千代子、小川雄二郎、伊藤然、(1名欠)
     事務局1名 福島紀子

1 報告事項
(1)第3回全史料協役員会の報告
      各委員会が改組の対象となっているが、次年度以降の事務局担当館等は未定、3月中には決定される予定。 委員会編成のブロック制について、公文書館が設立されていない県も含んだブロックとなっており、今後分担が機能的 に回っていくか不明。会長事務局の負担軽減を考えるならば、専従者よりも事務所の確保を考えた方がよいのではないか。

(2)全国大会の開催方法について
      近年の大会は開催費用がかかりすぎるのではないか。大会参加費は安い。会場としてホテルの使用など会場費が高い。 研修会が現在は参加無料でおこなわれているが、大会と抱き合わせではなく、別個に有料化してはどうか。

2 協議事項
(1)1月30日開催の資料保存研修会について
 参加者多数であった。館内の展示等のありかたについて、原文書(資料)を扱うアーカイブの立場からの意見として提 言する必要がある。従来の展示に対する意見は、ミュージアムの意見であることが多く、収蔵庫に入った感想も含めて、 専門家としての感想を伝えておく必要がある。

(2)ブックレットについて
 紙面体裁、構成上の意見。紙面体裁は事務局で作成する。

(3)資料保存委員会としての活動に対する反省と課題
 意図的な保存にむけての動きをはじめることができた。従来把握されていなかった資料保存の現状が把握されたことの 意義は高い。2年間の活動は外にむけた動きとして成果を上げているのではないか。全史料協から国へ要望書を提出し、 これに反応して国が動いたことの意義も評価される。
 保存の手だてを具体化する必要があるのではないか。判断基準を作るための方法論の策定が必要。多くの関係組織で使 えるもの(判断基準・物差し)を全史料協で作ることが、都道府県機関会員のメリットになるのではないか。
 文書の電子化にともなう問題を継続して検討する必要がある。電子化の技術や問題点を把握している人とコンタクトを とる必要がある。現状では電子化に関する実体は不明な部分が多く言葉が一人歩きをしている感がある。
 電子情報のあり方について、@作成レベル、A保存、Bやりとりの各段階にわけ、当面全史料協が関わるであろう保 存のレベルに限定して指針を示し、提言を継続的に発していく必要がある。電子記録による保存には不安があるという立 場を、全史料協が貫くのでもよいのではないか。
 市町村合併問題に関しては、市町村レベルで取り組むことの意義を再確認した。全史料協内部に自治体史編纂に関わる個 人会員を取り込み、市町村レベルの意見を反映させる必要がある。役員として入ってもよいのではないか。それには、市 町村メンバーの任意部会のようなものを設け、県とは違うスタンスの提言を行えるようにする必要性がある。

【活動報告】
1、全史料協研修会(平成14年10月16日、富山市)での資料保存の研修を実施
 10月の富山での研修会に、資料保存委員会の研修として、青木睦委員が講師として「海外における記録史料Archivesの保存・修復」の研修を実施した。

2、全史料協第28回全国大会全体会(平成14年10月17日、富山市)で資料保存委員会アンケート結果を発表
富山大会全体会Tで、資料保存委員会として、同委員会事務局の福島紀子が「市町村合併と史料保存―資料保存委員会によるアンケート結果から―」を発表した。

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