記録遺産を守るために 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会【全史料協】

平成16年度 資料保存委員会






資料保存セミナー
「記す・残す・繋ぐ−阪神淡路大震災と自治体−


近畿部会と共同開催です。詳しくは近畿部会のページへ。



文書館防災の手引き



〔会議報告〕

平成16年度第1回委員会

□日 時 2004(平成16)年6月6日(日)午後1時30分〜午後5時
□場 所 松本市文書館研究閲覧室(長野県松本市和田1058-2)
□出席者 小松芳郎委員長、大西愛委員、小川千代子委員、青木睦委員
 (欠席 伊藤然委員、君塚仁彦委員、上甲典子委員欠)
  事務局 福島紀子

1 報告事項
(1)第1回役員会のおもな協議事項について
(小松委員長、小川委員より)

(2)平成15年度資料保存委員会事業報告・会計報告
・報告書等の売上金は資料保存委員会の歳 入ではなく、本会へ納める旨を確認。
・会計・予算の報告書の形式を変更したこ とによって、運用上何が便利になったか、 変更した利点はどこにあるのか、会長事 務局からの説明があったか確認してほしい。
・平成15年度報告書の作成について
機関会員と個人会員へ配布し残部は販売 対象とはしない。ただし、会員以外の回 答自治体に報告書を送る必要はないか、 検討したい。

2 協議事項
(1)資料保存委員会の平成16年度事業について
・阪神・淡路大震災10年の区切りとして報 告集を発行する印刷製本費を計上した。

(2)研修会の実施について
・8月の研修会は、「資料保存の現在」と して8月7日(土)午後1時30分から松本 市文書館会議室で開催する。関東部会 (月例研究会)と共催し、全会員へ呼び かける。日本図書館協会の資料保存委員 会、史料ネット、都道府県史料協の関係 者に報告をお願いしたい。
・資料保存研修セミナーは、仙台市内で 「宮城地震と資料保存」をテーマに開催 する。宮城歴史資料保全ネットワークに お願いし、資料保存委員会で担当してい きたい。
・1月開催予定の研修会(防災フォーラム) について、関東部会運営委員会座長から 資料保存委員長への提案があり、提出さ れた企画書もふくめて協議。この企画で の共催は困難と判断。1月の関東部会例 会への協力の方策については、今後協議 していく。
・資料保存委員会の1月研修会は、昨年が 東京都内での開催であった。今年度は開 催場所を関西方面としたいので、近畿部 会に共催をお願いしたい。近畿部会の日 程と合わせて調整し、双方で協議してい きたい。

(3)報告集の編集・刊行について
・セミナー・研修会等の報告レジュメ、原 稿を集めてジャンルものにして編集する。 「災害文化」をキーワードとして、防災 についての具体例を入れていきたい。
・これまでに、防災委員会・資料保存委員 会で刊行し、発表されているものをまと めて事務局(松本市文書館)で集約して おく。8月の資料保存委員会で検討する。




平成16年度第2回委員会

□日 時 2004(平成16)年8月8日(日)午前9時〜11時30分
□場 所 松本市文書館研究閲覧室(長野県松本市大字和田1058の2)
□出席者 小松芳郎委員長、大西愛委員、小川千代子委員、伊藤然委員
(欠席 青木睦委員、君塚仁彦委員、上甲典子委員)
 オブザーバー中村修(藤沢市文書館)、事務局 福嶋紀子

1 報告事項

(1)新潟県・福井県の豪雨災害について
・資料保存委員会では8月5日付で、芸予地震時等の例に随って、お見舞いの文書を、 新潟県と福井県の機関・個人会員に送った。

(2)いわし博物館の事故について
・資料保存委員会の自治体史アンケートで回答を寄せている。

(3)『自治体の保有する公文書の現状』編集状況について(報告)
・アンケート回答自治体からデータの還元を望む声がある。 発送先の780自治体の発送費と増し刷り分の予算が不足している。会長に相談してほしい。
・公文書保存を呼びかけるためのアピールとして、正式に会長名で発送したらどうか。

(4)資料保存研修会(8月7日)について
・関西方面の出席が少なかった。今回は、全国大会の準備の研修会と位置付けなかったので、 参加の様子がだいぶ変わった。
・紙媒体の史料をどのように保存処理するかを論じる場がなくなってきている。 今後の研修や全史料協のなかで取り組まなければならない課題である。

(5)歴史学研究会からの市町村合併に伴う資料保存のアピール
・昭和の合併で大量の文書が廃棄されたのは事実か。 廃棄の事実はどこまで跡づけられているか、 廃棄しないままにいい加減な処理をしたことの方がむしろ問題ではなかったか。 歴史研究者の視点から見た記録管理に対する考え方が、正しいのかどうか検証が必要ではないか。

(6)その他
・各国のアーキビストは倫理綱領などの問いかけがあったとき、関連業務間で採択の方法や取り組みについて、
検討をおこなっているが、全史料協ではどうか。
・資料保存委員会でも、災害が起こったとき、各々のレベルでどのように対応したらよいのかを作ってみたらどうか。 防災のガイドラインは作ったが会全体に反映されていない。 機関会員は何をすればよいのかについて今後検討していきたい。

2 協議事項

(1)今年度の報告書編集について
・この10年間の防災委員会・資料保存委員会として行ってきたことの資料集成を作成する。 報告書形式で、史料集として時系列で編集する。内容は、全史料協の名の下でおこなった動きだけとする。 会員数を印刷。
・関連機関に会報などの残部を寄贈してもらう。
・タイトルは、『阪神・淡路大震災から10年−記録集成− 全史料協資料保存委員会』とする。

(2)資料保存研究セミナー
・平成16年11月28日(日)午後1時半から5時まで、宮城県公文書館で開催の予定。
・宮城歴史資料保全ネットワークと共催し、テーマは「宮城地震と資料保存」とする。
・報告者は4人(保全ネットワーク3人、資料保存委員会1人)にお願いする。
・宮城県公文書館企画展「災害関係」の見学の時間をとりたい。

(3)防災フォーラムについて
・7月4日に、京都府立総合資料館で、資料保存委員会(小松、大西)と近畿部会(烏野氏、古瀬氏)とで、 打ち合わせを行う。
・平成17年2月上旬に(時間は午後1時半から5時まで)、西宮市で開催の予定。
・全史料協近畿部会と共催で、テーマは「記す・残す・繋ぐ−阪神・淡路大震災と自治体−」とする。
・報告者と日程については、近畿部会に一任する。

(4)その他
次回第3回資料保存委員会
  11月28日(日) 仙台市で開催予定



平成16年度第3回委員会

□日 時 2004(平成16)年11月28日(日)午前10時〜12時
□場 所 宮城県公文書館(宮城県仙台市宮城野区榴ケ岡5番地)
□出席者 小松芳郎委員長、大西愛委員、小川千代子委員、伊藤然委員
     (欠席 青木睦委員、君塚仁彦委員、上甲典子委員)

1 報告事項

(1)『自治体の保有する公文書の現状』刊行について
・9月16日の役員会で、アンケートに応えていただいた780市町村への対応について協議され、 会長と資料保存委員長とで検討することとなった。その後、会長と委員長との打ち合わせの結果、 780市町村へ本書刊行の通知を封書で発送し、報告書ファイルのPDF化したものを全史料協の ホームページに掲載することとし、増刷はしないことに決定された。切手代とPDF作成費用は、 会の予備費から年度末に支出してもらう。

(2)資料保存研究セミナー(28日午後開催)について
 ・委員の役割分担を決める(進行大西委員、司会小川委員、記録伊藤委員)。
 ・こうした会の開催は、全史料協のホームページにきちんと掲載し、周知することが大切である。

2 協議事項

(1)『資料保存委員会研修・セミナー報告集−阪神・淡路大震災から10年−』の編集について
・防災委員会設置前のICA関係の資料も、前史として扱う。
・8月の委員会で確認された方向で、事務局(松本市文書館)で編集を進める。
(2)防災フォーラムについて
・平成17年2月に開催予定。全史料協近畿部会と共催。 テーマは「記す・残す・繋ぐ−阪神・淡路大震災と自治体−」。
 ・日程が決まり次第、近畿部会から連絡。

(3)新潟県中越地震後の対応について
・10月23日の地震発生以来、資料保存委員会としての対応を考えてきた。
・11月初旬に、全史料協会長の了解を得て、全史料協ホームページへの、 台風23号を含めたお見舞いの文面の掲載を、編集・出版委員会へ依頼。 あわせて、関東部会事務局(埼玉県立文書館)へ、資料保存委員長から掲載の旨を伝えた。
 ・資料保存委員会の「文書館防災対策の手引き」(平成8年3月初版、平成13年1月3版)を、 こうした機会に会員に広く知らせる必要がある。
 ・平成16年7月に内閣府から出された「地震災害から文化遺産と地域をまもる対策の ありかた」(災害から文化遺産と地域をまもる検討委員会)も、もっと周知され、お互い によく知っておいたほうがよい。
 ・今回の中越地震による被害が注目されているが、台風23号による被害のほうは、 マスコミにもあまり取り上げられてきていない。資料を守っていくという立場から、 見るべきものはきちんと見ていくことが必要ではないか。
・新潟中越地震被災資料の救助のため、現地からまとまった人数のボランティアを募 集したい旨の依頼メールが資料保存委員会に届いた。これへの対応方法をめぐって協 議し、さらに全史料協の資料保存にかかわる有事ボランティア要請への対応について 議論した。その結果、全史料協全体として資料保存にかかわる有事ボランティア要請 への対応への対応方法をきちんとつめる必要があるということになった。
・なお、新潟中越地震へのボランティアの要請に対しての資料保存委員会としての 対応をめぐって議論があった。議論のポイントとして、つぎの5点があげられる。
 @資料保存委員会は、資料の救済活動に人的派遣をすることを主目的とした団体か。
 A資料保存委員会には、会員に対してボランティア要請の情報を機敏に取り次ぐ方法論があるか。
 B資料保存委員会がこれまで行ってきたのは、情報や資料保存のノウハウ提供である。
 C人手の提供は、全史料協という組織では扱ってきていない。
 D阪神・淡路大震災のときは、個人の立場でボランティアをした。

(4)その他
・資料保存委員会第4回会議は、3月に開催の予定。




〔活動報告〕

1 資料保存委員会研修会・第221回関東部会月例研究会

(1)次第と日程
テーマ「資料保存の現在」
日 時 平成16年8月7日(土)
午後1時30分から5時
会 場 松本市文書館会議室(長野県松本市和田1058の2)
共 催 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会資料保存委員会・全国歴史資料保存利用機関連絡協議会関東部会
目 的 資料の保存運動に携わるなかで、機関や個人からなる運動は、 次第に広域化しネットワークを形成しながら展開しつつあります。 今回はこうしたネットワークによる活動の成果と抱える課題について情報交換をしていくため、 それぞれの立場からの報告を聞き、今後の課題について、会員相互で考えていきたいと思います。
参加者 20人

日 程
13:30 開会(司会・進行 資料保存委員会伊藤然委員)
13:35 開会挨拶 資料保存委員会委員長小松芳郎(松本市文書館館長)
13:40 報告1「図書館における資料保存」日本図書館協会資料保存委員会 細井守氏
14:20 報告2「史料ネットの資料保全」尼崎市立地域研究史料館 辻川敦氏
15:15 報告3「都道府県史料協の課題と長野県における資料保存ネットワーク」長野県立歴史館 田玉徳明氏
15:55 質疑応答・意見交換
17:00 閉会挨拶 関東部会部会長 小船喜一氏(埼玉県立文書館長)
18:00 懇親会

(2)資料保存研修会の報告

@小松芳郎資料保存委員長の挨拶

  千葉県九十九里町立いわし博物館が爆発し たという報に接して、青木睦氏(資料保存委員会委員)はただちに現地入りした。 また、福井の豪雨では史料ネットから福井ネットを立ち上げて救済に当たっている。 こんな予期しないことが次々に起こっている。本日は、「資料保存の現在」というテーマで、 図書館の資料保存、史料ネット、県史料協の事例からネットワークをどうつないでいくか。 現在を考えるためには過去の検証から、そして未来はどうなるのかまでを含んでお話しいただきたい。

A報告1
「日本図書館協会・資料保存委員会の活動から」
細井守氏(藤沢市・日本図書館協会資料保存委員会)の報告

・利用者優先の図書館資料保存
  図書館では、「利用のための資料保存」といい、利用が優先される資料保存をめざしている。 また「(図書館同士の)協力なくして保存なし」ともいわれる。 この2つが象徴的な言葉として印象に残っている。それに比べて文書は、 もともと利用を目的としていない、それどころか他人には読んでほしくない文書もある。 図書館と文書館の2施設を比べながら、日本の資料保存について編年で見ていきたい (資料:『図書館と資料保存』松雄堂 1995)。

・酸性紙問題から始まった図書館界の資料保存
  1982年に金谷博雄『本を残す―用紙の酸性問題資料集』(私家本)を出してから 日本図書館協会がこの問題に注目した。83年にはマスコミが酸性紙問題を取り上げ、 国立国会図書館安江氏が蔵書劣化調査を実施した。こういう調査はたぶんこれがはじめてであった。 84年は「資料保存元年」といわれる。この年、全国図書館大会がはじめて大阪で開催され、 保存分科会で酸性紙問題を取り上げ、以後、毎年分科会を開催。 アメリカでは劣化が進んでいることが問題になっていたが、84年の国会図書館の調査の結果、 あまり傷んでないことがわかった。これはアメリカでは空調が入っていたので劣化したが、 日本ではまだ空調設備をしていなかったため劣化していないと聞いた。 この教訓はその後の日本にまったく生かされていない。85年、図書館協会資料保存研究会が発足、 月例会を開始し、「ニューズレター」を刊行。また、全国図書館大会(仙台)で資料保存自主分科会が開かれ、 修復・紙・文書館関係者など全国から人が集まって熱気のある集会であった。 86年、国立国会図書館に資料保存対策室(元 製本課)が設置され、どのように残すか積極的な試みがなされた。 87年の全国図書館大会(東京)では資料保存分科会に郷土資料担当の人が多く集まった。 この年公文書館法制定。88年になると東京修復センターなどプロの専門家が出現した。 89年、鶴見大学(図書館学)で夜間の資料保存講座を開き現職者への研修を行った。

・資料保存研究会から日本図書館協会資料保存委員会へ
  90年には日本図書館協会資料保存委員会を設置。しかし、月例研究はやや低調となる。 全国大会(静岡)では、これまでやや専門的過ぎたことを反省して、 「誰にでもできる資料保存のための調査と計画」。資料保存委員会には「資料保存の基礎技術WG」発足。 また91年、「記録史料の保存を考える会」が発足したが、これは全史料協系であり、 「史料」という専門性をめざすものであり、図書館とは方向が違っている。

・除籍、スペース、職員問題
  図書館では廃棄のことを除籍という。選書については委員会で検討されているのに比して、 除籍についてはとくに基準やそれに関する統一見解はなく、スペースや劣化度、 新版が出たことなどをきっかけとして実施されている。現場は「残したいけどスペースはない。 それに対する予算措置はない」という。また、職員は2、3年で代わるので、 選書を担当した人が除籍まで在籍することはない。自分が選んだ本ではないのでその価値はわからない。 そういう人事的循環になっている。

・文書館と図書館
  市民利用のための図書館と文書館である。文書館=保存記録、図書館=書籍資料という図式でいいのか。 古くて大事なものは文書館、だから図書館にある文書を剥がして持ってくることが正しいのか。 先に小松芳郎氏が図書館協会の講演会において「図書館は資料保存機関である」と言われたことは 大きな意義があると思う。

B報告2
「史料ネットの史料保存活動について」
辻川敦氏(尼崎市立地域研究史料館・歴史資料ネットワーク)の報告

  1994年1月の阪神淡路大震災は、尼崎から西の被害が大きかった。   尼崎市では職員が交代で、市民救済、被災者調査、被災建物調査などに当たっていた。 史料館自体は書庫が倒れて散乱したが文書は箱に入れていたので傷みはなかった。 ボランティアがきて整理を手伝ってくれた。保全の話題は指定文化財については各市の文化財係が担当したが、 指定外の文化財や文書は、自治体によって動きが早いところと言われてから気付いたところと、 言われても対応しないところもあった。尼崎は言われて気付いた。 近隣の自治体と連絡をとりながら救援や関西の歴史学会、 文化庁(田良島氏)の傘下の救援委員会などとともに活動を始めた。

・史料ネット設立経過と活動の広がり
  史料ネットは、同年2月に歴史資料保全情報ネットワークとして緊急的に開設した。 はじめに被災地に資料保全を呼びかけ巡回を行った。生命にかかわることではない 史料・文化財のことについて問い合わせることに危惧を持っていたが(説明すると分かってもらえたが)、 文化財や史料認識に大きなギャップがあることに気付いた。この取組みによって、 歴史学や史料・文化財保存と市民社会との関わりについて、既存のあり方への根本的な見直しが提起された。 1994年4月には歴史資料ネットワークと改称し、被災地域の文化全般に目を向けるボランティア組織とした。 1995年5月にほぼ救済を終了したが、史料ネットは活動を継続、2002年にさらに会員制に改組した。

・意義と評価
  このような大規模災害時において、指定文化財以外の民間所在史料文化財をも対象として 専門家と市民ボランティアが加わって行なった保全活動としては日本で最初のものである。 またその経験が、その後の各地の諸災害の現場において、国内(新潟地震1995.4、広島県集中豪雨1999.6、 鳥取県西部地震2000.10、芸予地震2001.3、宮城県北部地震2003.7)および国際(台湾大地震1999.9)的に 広がりをもって活かされた。さらに、史料・文化財の保存活用は単に災害対応の技術的方法論や 行政施策の問題ではなく、日常的に史料を守り活用する市民の疑問に対して応えていき、 啓発していくことを実践するという取組みが始まった。

・活動の例として「富松城跡(尼崎市内)を活かす町づくり」がある。   中世城の土手の一部が残存している雑木林であるが、新住民にも町を見直す一つのシンボルとして 城跡を活かすこと、勉強会をしたり、神戸大学地域連携センター(大学も社会貢献をすることが 義務づけられるようになってきた)と史料ネット(これも神戸大学内にあるが外部団体)によって 400人の講演会を実現し、展示会やバーチャルサイトを立ち上げた。 自治体ではできないと決めてしまうのではなく、枠組みをつくりアウトソーシングをするのが 市の仕事であると考えている。

C報告3
「都道府県史料協議会の課題と長野県における資料保存ネットワーク」
田玉徳明氏(長野県歴史館・長野県史料保存活用連絡協議会)の報告

・長野県立歴史館と長野県史料協
  長野県立歴史館は平成6年(1994)に設立した複合館で、文献課が文書館に相当する。 展示もするので実態は博物館である。設立10周年を迎えいくつかの事務局を抱えている。 長野県史料保存活用連絡協議会はその一つである。平成8年の県立歴史館の資料保存講習会参加者が 要望して史料協が生まれる(正式発足は平成12年、機関36、研究団体5、個人14)。 平成13年は全史料協の長野大会があった年で、長野県史料協は初めて総会をもった。 また、県内の東信、北信、中信、南信の4地域が持ち回りで会を運営、 またこの4地域の保存活動状況を紹介している。

・全国の史料協の活動
  全国15地域の史料協の事務局・位置づけ・活動目的・会員数を表にまとめて分析し、 紹介する。また、史料協の成果と課題もまとめられて今後の方向性を探っている。 「全史料協には加盟できないが、県史料協には参加したいという自治体の意見、 隣県どうしの研修会や講演会などによって市町村公文書館設立への意識」が 高まっていくことを目指している。

D質疑応答
・史料協の組織は東に偏っている。協議会に代わる活動はあるか、また、県を越えての活動はあるか。

辻川:協議会でないが研修会などはしている。そのレベルに止まっている。県の取り組みも弱い。 受け止める側もやってほしいという流れは弱い。全史料協近畿部会はそれを補う。史料ネットとの関連はない。

田玉:西の方の動きはない。情報が得られない。文書館等主催で保存活動、講習会をしている。 香川、徳島、広島、鳥取、沖縄の活動が充実しているためかと思う。

・個人と機関の関わりかたは会費の出所に違いがある。図書館協会の資料保存研究会の時代の会員実態を聞きたい。

細井:基本的に個人であり、機関ではなかった。まったく枠がなく業者もイーブンであった。

・全史料協は対外的には自治体文書を扱う団体と大まかには分類されていて、企業、大学は別となっている。 そして名称には「機関」がついている。県史料協の機関会員は、理由付けして予算措置をしていると思う。 ネットワークは組織としてのネットワークなのかを聞きたい。いろいろな成果があるようだが、 組織にとってのメリットなのか、(それが成立するのか)、それぞれの個人にとってのメリットなのか。

田玉:長野県は個人のネットワークからはじまり、組織のネットワークとなりたい。

辻川:枠組みは機関としてはメリット(研修・ノウハウ・情報など)であると考える。 いちいち照会をかけていては、この年会費相当分でこれだけの情報がとれるとは思えない。 ただ、現在はそのようになっていないと思う。私なら会費をやめて参加の人に事務局をやってもらい ボランティアでもよいし、そして研修は自己研修(個人のための)とし、それを生かす職員を自治体が遇する。 研修会を持つのは独立採算でもできる。やりたい人がするほうが有効な場となる。

細井:資料保存委員会は図書館協会がバックとしてあるので、自治体から送り出せる。 個人で参加するが旅費も出る。職員の研修であるがどのような会かによって機関が認知した中で個人参加が望ましい。

・埼玉県史協は組織としてのネットワークとしている。役員は2、3年で異動する。 そこで学ぶのは公文書館法であり、それを学んでから他所へ行くのは組織としてのメリットはあると思う。 個人と役所の両方ある。個人は意欲的な個人だけをまとめると自治体から離れていくこともある。 自治体が機関として動かしていくことも必要である。

辻川:直接参加するという形でなく、いろんな団体があちこちで生まれている。 中心メンバーの外側にいる市民もあり、何人とは言いにくい広がりがある。

・重要なことはバトンの渡し具合である。自治体から市民へ。自治体はしてくれないので ネットから働きかけていく。自治体はあくまで受け身。つなぎが出来るというのも史料協の大きな仕事である。 量の問題ではない。また、大学は変わりかけていて、地域貢献する必要があり、 地域に返していくことが求められている。

・ライブラリーやアーカイブは記憶を守るということが概念であり、組織のためになる、 個人のためにという発想はなかった。保存が目的ではなくて何を目的にするのか。 自治体の記録を残すことを市民に保障することである。市民自身はアーカイブという自覚がないので捨てている。 これをどう支援し、発想を転換させるか。市民に一番近いのが市町村の担当者、文書館の職員であり、 それが仕事である。組織か個人かのメリットを求めて、全史料協に参加するというより、 その活動を通して実現すること。ボランティアでも公私でもそれが大きな目標と思う。

細井:個人参加がうまく機関にフィードバックされていない。個人が機関に還元、評価するのを 上司が聞いて伝達する。それが管理職まで届くと機関にメリットと感じる。

・歴史資料は保存されなければならない、とするアーカイブ、ライブラリーの使命をうたう概念と、 そんな必要を感じないとする住民(納税者)の意識との落差をどう埋めるのか。 図書館や文書館、博物館が行政組織の一部であるなら、住民ニーズが根拠にできない場合は、 保存の必要性を叫んだところで、必要な予算を得るのは困難。まずは図書館、文書館、博物館ありき、 から発想したのでは「保存」は根付かない。住民の理解と協力を得るための 適切な説明方法をみんなで考えていきたい。

辻川:テクニカルに説明することも必要である。組織も個人も市民のために具体的にするべきである。

E関東部会長挨拶
小船喜一氏(埼玉県立文書館長)

今回のお話はそれぞれ大変重要に感じた。
最近は市民の意識も急速に変ってきた。機関はこのことを考えるべきである。




〔会議報告〕

平成16年度第4回委員会

□日 時 2005(平成17)年3月6日(日)午後1時30分〜午後5時
□場 所 松本市文書館研究閲覧室(長野県松本市和田1058-2)
□出席者 小松芳郎委員長、大西愛委員、小川千代子委員
 (欠席 青木睦委員、伊藤然委員、君塚仁彦委員、上甲典子委員欠)
  事務局 福島紀子

1 報告事項
(1)第3回役員会における資料保存委員会の 提出議案「災害時(国内外を問わず)の全史 料協の対応について」について
・全史料協の中でも検討が必要であるという認識。人材派遣団体ではないこと、 金銭の支出をあてにすることもできないが、情報を投げかけたり、災害時のノウハウ的なマニュアル、 ガイドラインの作成が必要ではないか。段取りの方法、職場として人を派遣するための周辺環境整備の方法などが検討された。
・有事の際の対外的な窓口として委員会組織が位置づけられる可能性があるかどうか。 他の役所関係へも委員会としてアプローチをし、コンタクトを取っておく必要があるのではないか。 文化財ホイールの様な物を資料保存委員会で検討してみてはどうか、企業とのタイアップの必要性も踏まえて。

(2)『阪神淡路から10年 記録集成 全史料協資料保存委員会』の編集について

2 協議事項
(1)平成16年度の委員会事業について
  ・委員会4回、研修会3回実施、報告書の刊行、ICAウィーン大会での防災ビデオの普及。
・「書庫の救急箱」の普及について
 機関会員に買ってもらうために業者に依頼してセットを作り、販売のために注文を仲介してはどうか。 今までの普及効果が上がっていないので検討したい。
・防災ビデオの利用記録を一覧にまとめてみてはどうか。4月の異動に機関会員に声をかける、 史料協組織を持っている館で研究会を開催する際に使ってもらう。

(2)平成17年度の事業計画について
@報告書の編集と刊行
 ブックレット、パンフレットの形、ガイドライン的なもので、シリーズ:「資料保存と防災対策」の様な形で継続する。
 役員会の協議題で検討されている総務省中間報告を、年4回の委員会で検討してみたらどうか。 毎年の委員会報告書として、防災の流れの中で検討してみる。

Aセミナーを2回開催
 8月の研究会は、松本という中間点での場所で開催することに意味があるが、会場を考慮して関東部会に声をかける。 新潟でという可能性もある。
 2月頃を目安に市町村合併を扱った研修会を行う。市町村合併に関して、総務省通達後のフォローアップが必要。 いくつかの事例、ケーススタディの報告をしたらどうか。アーカイブの話だけでなく、 記録管理の面からの報告者を呼んで議論したらどうか。

B全国大会前の研修に、「資料保存」の枠組みを復活する必要があるのではないか(昨年は実現できなかったが)。 新しい研究・研修委員会に打診してほしい。資料保存について物理的方法を学ぶ機会としたい。

C書庫の救急箱の普及
 図書館や博物館へ普及していく。企業展示に店を出すようなところで、セットを作り注文を取る。 防災対策の本を抱き合わせて販売したい。

(3)平成17年度予算について
 印刷製本費・研究研修費について若干の減額になる。事業計画について審議した点をもとに、 事務局で立案することで了解。

(4)事務引継等について
 新委員については、現委員会・委員長よりの推薦として、次期委員長へ申し送る。

(5)アンケートデータの引継について
 データを刊行物の形に集約してあるので、公開すべき部分についての紹介は済んでいる。 デジタルデータは、刊行したことで責務を果した。

〔活動報告〕
1 資料保存セミナー(近畿部会第76回例会)を開催
(1)趣旨
 阪神淡路大震災から10年が経過したが、被災資料の救済・保存・防災等に関して、次世代への語り継ぎ、さらにはこれらに対応する環境整備のあり方等について考えていくことが大切と考える。 このため全史料協資料保存委員会及び近畿部会の共同開催として、資料保存セミナー(近畿部会第76回例会)を開催した。

(2)日程と次第
と き 平成17年2月18日(金)午後1時30分〜4時45分
ところ 西宮市民会館(アミティーホール)大会議室(兵庫県西宮市六湛寺町10番11号)
テーマ 記す・残す・繋ぐ−阪神・淡路大震災と自治体−
     報告者 森本由貴子氏(兵庫県企画管理部管理局文書課)
     (テーマ:兵庫県の震災関連文書等保存事業について)
     豊田美香氏(西宮市総務局情報公開室)
     (テーマ:震災資料と現代史編さん)
緊急報告
     花岡公貴氏(上越市市史編さん室)
    (テーマ:新潟歴史資料救済ネットワークの取組み)
参加者 41人


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